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Who is TorHans?

torhans_logo近年トライアスロンマーケットで、常に重要視されるカテゴリーとなってきたのが、ハイドレーションツール(補給系パーツ)の分野だ。これまで、トライアスロンシーンにて、ブランド大手のProfile Designから販売され続けているロングセラーのAero Hydrationシリーズを始め、XLabSpeedFil等、多くのブランドが、このハイドレーションツールのマーケットへ参入し競争を続けてきた。

この激化するハイドレーションマーケットの争いの中で、他の経験のある大手ブランドに比べて、そのブランド名を急速に上げてきているのが、TorHansだ。2009年に、創立され、当初は、サイクリング好きなデザイナーで創作家でもあるTor Naerheimと、空力に大きな関心を持っていたフライトパイロットでもあるHans Bielatが、ファーストネームのTorHansをつけて、TorHansと言うカンパニーネームを名付けた。そして、この二人に加えて、国際的なビジネス展開として、大きく動かす火をつけたのが、実業家でもあるKevin Coxだ。

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3人という小規模で企業しながらも、なぜ、このブランドが、この短い期間で、他ブランドとの競争に立ち向かう程の力を付けてきたのか。それは、この3人が、サイクリストやトライアスリートとしての経験を通じ、身に感じたハイドレーションの問題点を、どうにかできないかと、熱心に商品を研究し続け、経験のあるビジネスマーケティング力が大きく会社を変えた。

リサーチ力とデータ証明

これまで、他のブランドがしていなかったマーケティング方法として、初めて公の場で、TorHansが発表したのが、リサーチのやり方やそのデータの公表だった。現在、どのバイクブランドでも、エアロダイナミックを大重視して、日々他ブランドとの比べ合いの研究が行われている。それと同じ様に、TorHansも、ハイドレーションを付けた時に、どう空力効果が変化するのかを、重要要素の一つとして、荷台に置いた。

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その研究では、実際に、ノースカロライナ州やサンディエゴにある空力テスト施設で、実験を重ねた上に、F1マシンの空力検証でも使われるコンピューターを用いた、CAD(コンピュータ支援設計ソフト)やCFD(数値流体力学ソフト)を使って、最大限のエアロダイナミックにマッチするデザインにこだわりがある。そして、フラッグシップモデルのAero 30を始め、Aero20VRといった、それぞれの商品を、細かに、研究を重ね、ハイドレーションボックスの最高の形状を求め、最大限の満足が行くまで、現在も日々追求している。

現在プロダクトデザインの元になっている形状として、円形状の物より24倍抵抗の少なく、空力上最適な形状であるAirfoilを採用している。Airfoilとは、アメリカの全米航空諮問委員会の研究によって生み出された、飛行機の翼を作る上で最適な形状である。

TorhansAeroProfileNACAAirfoil

この形状は、バイクブランドのCerveloを始め、他のバイクブランドも真似る様に、Airfoilデザインを基礎にしてフレームデザインを作り上げ、Cerveloの初期Pシリーズを始め、一番新しいマシンであるP5のダウンチューブにさえも、この形状を現在使用しているのが見られる。

この研究結果を応用することで、検証(Tested)、実証(Ridden)、そして証明(Proven)された最適なエアロ形状で、TorHansのプロダクトが、多くのアスリートを納得し、ブランドとして知名度を上げてきた。

アンバサダーアスリートの存在

このブランドの知名度に火をつけたのは、2011年にIronman世界王者となったイギリス代表Chrissie Wellington(クリッシー・ウェリングトン)が、チャンピオンバイクCannondale Sliceに、TorHansAero 20を装着していたことが大きなヒットのきっかけになった。

TorhansChrissieWellington2011IMKona

これを期に、トップレベルで活躍をするプロアスリートをアンバサダーとして協力し始め、現在では、元オリンピアンで、2011年IM世界選手権4位入賞した、ルクセンブルグ代表Dirk Bockel(ダーク・ボッケル)や、現在Ironmanバイクコースレコード(180キロ)4時間2分17秒を持つ、アメリカ代表Andrew Starykowicz(アンドリュー・スタリコウィズ)を始め、2012年IronmanIM70.3のダブル世界王者に輝いたイギリス代表Leanda Cave(リアンダ・ケーブ)、そして、2011年Ironman世界8位のドイツ代表Andi Bocherer(アンディ・ボッシャアー)が、TorHansのアンバサダーアスリートとして活躍している。

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そういうトップ選手達を起用し、実際空力施設へ呼びこみ、そこで自社のハイドレーションプロダクトを、アスリートとバイクと共に、空力実験を行い、それぞれTorHansの商品を一つずつ細かく、様々な研究を進めていった結果が、急速にブランドの知名度を大きくしていった。

バイクブランドとのパートナー開発

このTorHansが、マーケティング手段として、一番成功を遂げたのが、トライアスロンバイクブランド世界シェア1位を誇るCerveloと、今年画期的なデザインであるニューバイクIAを発表した、バイクブランドFeltの2社と提携した商品作りが大きな進歩となった。

当初、Cervelo P5発表されて以降、トップチューブ上に装着することができる、最大限空力にこだわった、シンプルかつスムーズなハイドレーションボックス(Aero Bento)を開発した。この商品発表当初は、トップチューブ状に、2点のボルトが付いているバイクフレームである、Cervelo P5Trek Speed Conceptのみ対応していたが、現在は、新しいScott Plasma 5を始め、対応するバイクフレームもこれから増えてくるだろう。

Cervelo-with-Torhans-Aero-Bento

そして、Feltとのプロダクト展開に関しては、DAシリーズに対応したハイドレーションボトルのVRを発表し、フレーム内側の形状とぴったりはまる様にデザインされ、このVRハイドレーションボトルを使用した時にも、最大限の空力を活かせるデザインを、共同で開発した。このFelt DAシリーズの完成車には、VRハイドレーションボトルが、付属してくるモデルも発表されている。

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プロダクトライン

ーAero 30/Aero 20

TorHansAero30Pic

TorHansを代表するフラッグシップモデルでもあり、最初に開発されたAero30は、最もエアロ効果を意識した高アスペクト比を持つAirfoilデザインを、ボトルの形状に採用している。その後に、開発されたAero20に加え、何度も改良や研究に、納得できるまで、時間を捧げ、最小限の抵抗をなくすために作られたバイクのエアロバーに装着する縦長のフロントハイドレーションボトルである。

TorhansProductComparason

Aero30は、トライアスロンバイクやTTバイクのヘッドチューブ標準角度72度に合わせて、商品のデザインをし、ヘッドチューブへ流れる空気の相互作用を考えている。ただ単に、すべての角を先細いボトルのデザインにすることよりも、切断面の様な角にデザインすることで、前方からくる空気の流れを、うまくボトルからフレームのヘッドチューブエリアに向けて、わずかにスムーズに逃がすことができるようになる。

現在多くのバイクブランドが、フレームやホイールのデザインにおいて、Airfoilの様な深みのある幅の広い形状をしている様に、Aero30も同様のコンセプトで、空洞実験で、横風や上下位置を考慮した上で、どのハイドレーションブランドよりも、抵抗の少ないデザインだと言うことを、証明することができた。

TorhansAero30Shape

実際、現在アイアンマンバイクコースレコードを持つ、プロトライアスリートのアメリカ代表Andrew Starykowiczを用いた空力実験では、Aero30を使用した時に、彼のスポンサーバイクOrbea Orduでは、抵抗を50グラム(パワー5ワット)軽減することが証明された。この数値は、ハイドレーションを付けてない場合よりも、良い結果となって出てきた。このStarykowiczの場合、Aero30を使用した場合、アイアンマンディスタンス(180キロ)では、約1分50秒速く、バイクタイムを節約できることになる。

AndrewStarykowiczOnTunnelTestTorhans

そして、Aero20に関しては、Aero30と少し違うデザインのアプローチをしている。楕円形状の先端をしていることで、スキーベンドのエアロバーの様に、先端が曲がっていて、ボトルが水平に設置できない場合でも、層流効果で、しっかりと空気をうまく流してくれるデザインをされているのが特徴だ。

これまで、腕と平行に通常のドリンクボトルを設置することは、最も風の抵抗が少ないと思われてきたが、実際問題は、ボトル自体の形状が、重要な要素とな る。独自のCDA実験での抵抗値を計った所、通常のドリンクボトルを腕の間へ平行に付けたところで、エアロバーの種類や幅、長さは関係なく、全面からあた る風の抵抗値において、良い結果を出すということはなかった。

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そこで、通常のドリンクボトルをつけるよりも、同様の積水量22oz(650ml)のAero20を使用することで、Airfoilデザインの形状を採用していることから、取り付けるエアロバーがどんな形状、長さ、高さ、幅であれ、簡易的に装着でき、尚かつ抵抗の少ない(速い)ことが、下のグラフでも実証されている。そして、通常のドリンクボトルを、毎回ボトルケージから取り出すことをせずに、強風下でも、エアロバーを持ちながら、ストローからハンドフリーで飲むことができ、補充弁から新しいドリンクをエイドステーション等でも簡単に補充できるのが一番の利点である。

TorhansAero20IndicationDrag

このAeroシリーズは、ボトルのデザインだけでは終わらない。補充口には、上部分に十字に切ってある厚みのあるラバー素材になっており、開けると下部分にには、もう一つ補充弁がついた溝がついた2重弁構造になっており、補充するのも簡易的にでき、そこからドリンクがライド中に漏れることもないデザインとなっている。そして、ストロー部分にも注目を当て、他ブランドのフロントハイドレーションに使用されている通常の丸いストローを使用した場合、高い値の抵抗が得られることもわかった。これの結果を元に、丸いストローに、Airfoil形状のカバー(Aero Must)を取り付けることで、下記のCFDによる絵の様に、大きく改善されたデザインを採用した。

TorhansAeroMustShape

そして、Aero30/20専用のアクセサリーであるAero Trayを、ボトルの上部分にはめ込むだけで、いままでサイクルコンピューター等を、エアロバーやステムへ取り付けることが困難とされてきた問題を解消してくれるので、いろいろなシチュエーションを考えたアクセサリー展開にも注目だ。

TorHansAeroTrayPic

 

 ーVR

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FeltDAシリーズのシートチューブに取り付け専用として発表されたのが、エアロ形状のしたドリンクボトルのVRである。このVRにもAirfoil形状を採用したまま、Felt DAシリーズのフレーム内部に取り付けた際に、最大限に風の抵抗を少なくするために開発されたものの、他ブランドのフレームにも、簡単に取り付けることが可能であり、スタイリッシュで、エアロダイナミックデザインが好評を得ている。

TorhansVRMountOnFeltDA

通常のドリンクボトルの様に、飲み口の弁を上下させて解放させることなく、十字の切り込みの入った飲み口弁が、ゴム素材でできているので、歯で軽く噛みながら、ボトルを握ると、中のドリンクをスムーズに飲むことができる。実際のバイクライドでも、開閉をしない分、段差等で中身の漏れがあるか実証してみたが、通常のドリンクボトルに比べても、飲み口を下に向けない限り、振動で中身のドリンクが極端に漏れるということはなかった。

ただ単に、ハイドレーションとしての使用を目的にすることだけではなく、ボトル下部に、切り取り部分の点字があり、そこをカッターで切り取ることで、チューブや修理工具を入れられる、ツールボックスとしても使用可能になる。通常パンク修理に使用する、替えチューブ、タイヤレバー、マイクロ簡易ポンプ、CO2ボンベ、ボンベアダプター等を、搭載することが実際できた。

ーAeroBento

Torhans-AeroBentoBox

現在、XLabから出ているStealth Pocketシリーズのハイドレーションボックスが主流となる中で、TorHansは、Cerveloの新しいPシリーズやTrekSpeedConceptのフレームトップチューブに、ボルトで留めるタイプ専用に開発したのが、Aero Bentoだ。元々Cerveloとの共同開発の元で開発され、Cervelo P5のトップチューズ前方に装着すると、P5 Six専用のAduro Barステム後方にぴったりはまる弁当ボックスとなっている。

取り口は、ゴム素材のカバーに、直線の切り込みがはいっているので、そのまま手で口を開いて、中の物を取り出せるので、ジッパーを開け閉めする手間が省ける。内容量も、他社のXLab Stealth Pocketに比べても、このAero Bentoの方が高さがあり大きいので、大量の補給食を必要とするロングディスタンスレースでは、たくさん詰め込めるので、とても役に立つだろう。

TorhansAeroBoxOnCerveloP5

このAero Bentoの難点は、トップチューブ前方に2点のボルトがついている、Cervelo PシリーズやTrek SpeedConcept専用ということで、その他のブランドバイクにつり付けることができない。だが、アスリートからのフィードバックを反映させる開発を大事にするTorHansなので、どのブランドバイクでも対応できる様に、将来的に改善していってくれるだろう。

ーNew Aero Z

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去年から開発を進めているフロントハイドレーションタイプのBTAドリンクボトルAeroZは、IMハワイ世界選手権でも、隠れるように展示してあった。その際は、まっさらなドリンクボトルで、補給口やストロー等は付いていなかったものの、その時ブースで教えてもらったのが、最後の一滴まで飲めるボトル形状のデザインと補給の簡易性能に大きくこだわることだといっていた。

そして、先週開催されたInterbikeにて、新しくなったプロトタイプの全貌を明らかにした。ストローが、ボトルの下方向から出すことで、最後の一滴までしっかり飲み干せるデザインとなっており、ボトル後方の溝にそって、マグネットでストローを装着することで、ライド中にストローが暴れることを防止できるようになった。補充口は、ふたを横方向に開けると、中には補充弁がついているので、補充する際に、中からドリンクがもれることもなく、その上からふたを閉めて密封するダブル構造なシステムになっている。

2013IMKonaTorhansNewBTA

このBTAドリンクボトル専用の台座を取り付けることをせずに、Aero30/20の専用台座をそのまま使用できるので、台座さえ持っていれば、両方モデル持ち合わせている場合、どちらか選んですぐに取り付けて使用できる。

詳しい写真での紹介はこちらーhttp://aerogeeks.com/2014/09/17/interbike-2014-torhans/

これから、この新しいハイドレーションマーケットで、大きな原動力になると思われるTorHansは、多くのトッププロやエイジグルーパーから、フィードバックを得て、開発にしっかり時間を重ねることで、自身のビジネスを急速に成長させてきた。いま現在は、世界規模のマーケティングをしてないものの、日本での販売代理店はないが、直接TorHansのウェブショップから購入して、海外発送もしているので、手に入れることも可能だ。

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  1. ピンバック: New TorHans AeroZ | TriWorldJapan

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