オーストラリアの主要都市メルボルンにて、アジアパシフィック選手権という名の元に、ハワイ世界選手権に並ぶ程の大規模レースとして、2012 Ironman Melbourneが開催された。
開催の前日までは、嵐のような天気が起こり、レース当日のコンディションにとても不安が湧いていたのが現状だった。ビーチは、波を打っており、風は垂れ幕の柱が折れ曲がる程の強さで、とても荒れた状態だったのがわかった。
いざ、レース当日になると、前日までの天候とはかわり、ここ37年間で一番の海の静かさとフラットな波だとローカルの住民が言う程、海が静まり返っていた程、風や波も止んでいた。だが、この良い条件とは裏腹に、当日の天候が曇りだったため、逆に寒さがアスリート達の敵になることもあっただろうが、その反面、熱さに弱い選手達にとっては、このの状況は高速タイムを出すメリットとなる大会になっただろう。
今回、多数のトッププロ達が参戦する中、エイジグルーパーの選手達も、このスイム、バイク、ランコースにおいて、すべてフラットで走りやすい環境だったため、好タイムが続々と出ていた大会でもあった。そして、プロ男女ともに、接戦で白熱した展開がレース中行われ、まさに世界選手権を見ているような素晴らしいレースが行われていた。
プロ男子
スイムがスタートし、予想通りで、元スイマーであるClayton Fettelが飛び出し、後方との差を徐々に広げ上げる展開が繰り広げ始めた。後方から、パックをなして、Greg Bennett、Luke Bell、Luke McKenzie、Eneko Llanos、Fredrik Van Lierde、Joe Gambles等のトップ選手達が追いかけていた。
ここまで、順調に自分の戦略で来た、Clayton Fettelが45分59秒という高速スイムタイムでフィニッシュし、後続のトップ選手達のパックとの差を1分15秒広げて、バイクスタートした。そのパックの中には、優勝候補のCraig Alexanderは、含まれておらず、トップと4分45秒の差で、Cameron Brownと一緒にスイムを終えた。すでに、この時点で、5分近い差が開いているので、Eneko LlanosやFredrik Van Liede、Luke McKenzie等のバイクを強みにする選手達に追い付くことは無理だろうと一瞬思われた。
プロのトップ選手達が、バイクがスタートし、ここで生まれた疑問は、スイムとバイクのコンビネーションを活かし差を広げ始めるClayton Fettelが、どこまでこのペースを1人でキープできるかだった。そして、後方から追いかけにかかるCraig AlexanderとCameron Brownであるベテランが、バイクパートで、どこまで先頭を行く15人のパックに追い付けるかが優勝のキーだっただろう。
15人程のパックをなして、程よいペースで駆け走る選手達だったが、初盤でCraig AlexanderとCameron Brownの両者が猛追走したことで、バイクパートの半分の距離の所で、先を行く大規模なパックに追い付くことができた。
トップを1人で行くClayton Fettelは、一時スイムでの1分の差を、バイクの153キロ地点までに、4分程に広げたが、フィニッシュ手前で、後ろの集団に追い付かれてしまった後に、Abu Dhabi Triathlonの疲れが出たのか、力尽きてしまい途中リタイアしてしまう。
この優勝候補を大量に含む集団だったが、バイクが弱い選手達を引き離すかのように、Fredrik Van LierdeとCraig Alexanderがスピードを上げ始め、トランジションに入り、それを追う様に、Cameron Brown、Eneko Llanos、Luke Bell、Luke McKenzie、Joe Gambles、Matty White、David Dellowの選手達が、接戦を繰り広げ、続々とバイクフィニッシュした。バイクラップでの最速タイムは、Craig AlexanderとCameron Brownの4時間24分代で両者とも素晴らしいタイムと追い上げを見せた。
最初のランパートでは、Craig Alexander、Fredrik Van Lierde、Eneko Llanos、Cameron Brown、Joe Gamblesを含むランを得意とする5人が集団で走り始めていた。その50m後方からLuke BellとMatty Whiteが追う中、ゆっくりな立ち上がりを好むDavid DellowとLuke McKenzieが走り始めトップの集団を追う展開が進んでいた。
だが、10キロを超えた所から、Craig AlexanderとCameron Brownがペースを上げ、最初にJoe Gamblesが脱落、その次にEneko Llanos、そして13キロ地点までには、Fredrik Van Lierdeまでもが、二人のペースに着いて行けなくなり、引き離され始めた。
この15キロ地点では、この二人のペースはキロ3分40秒で繰り広げられていおり、後方の選手達が追い付けるような余裕がなく、ランパート後半戦は、この39歳のCraig Alexanderと40歳のCameron Brownの一対一のベテラン対決が始まった。
ラン後半の海岸近くのランコースに入り始めてから、両者とも差を開けようと、コース上の細かい傾斜等を利用して付いたり離れたりと、接戦が行われていた。30キロ地点から、2から3キロ程この状況が続いたが、最後にCraig Alexanderが、ゴールから9キロ手前で、再度傾斜を活かし、Cameron Brownを引き離しにかかりが成功したことで、そのままペースを上げフィニッシュまで走り抜けた。そして、後方では、26キロ地点でEneko LlanosがFredrik Van Lierdeを抜かし3位へ踊り出るという白熱した展開が行われていた。
最終的にランでいつも通りの強さを見せた、Craig Alexanderが、ランタイム2時間38分46秒という驚愕なタイムで、レース前に言っていたことを有言実行をし、総合タイム7時間57分45秒で、初のサブ8でアジアパシフィック選手権覇者として、通算5度目のアイアンマンタイトルを獲得した。
その2分30秒後に、Cameron Brownが2位でフィニッシュし、一度はEneko Llanosに抜かされてしまったFredrik Van LIerdeが挽回し、3位で入賞を果たした。4位に、最後まで粘ったEneko Llanos、そして、David Dellowがトップ5入りでフィニッシュした。
フィニッシュ後すぐのインタビューで、Craig Alexanderが最初に発した言葉は、『Cameron Brownに敬意を払いたいとでも言いたい、なんて闘士だろう。』という形で、始終この二人の接戦が、いかにこのCraig Alexanderのサブ8と高速ランタイムを生んだか要因になったのかがわかる発言にだろう。
男子リザルト
1.Craig Alexander
00:50:33 | 04:24:43 | 02:38:46 | 07:57:44 |
2.Cameron Brown
00:50:37 | 04:24:48 | 02:41:17 | 08:00:12 |
3.Fredrik Van Lierde
00:47:25 | 04:27:40 | 02:42:46 | 08:01:26 |
4.Eneko Llanos
00:47:26 | 04:27:44 | 02:43:46 | 08:02:23 |
5.David Dellow
00:47:24 | 04:28:09 | 02:45:05 | 08:04:19 |
プロ女子
出場リストに乗っていた女子最速スイマーである、アメリカ代表Amanda Stevensが欠場したため、他のアスリートの中で、比較的スイムが速いと言われているイギリス代表のRachel Joyceに、スイムパートで注目が置かれた。その思惑通りに、スイムスタートから後方を引き離し始め、Rachel Joyceが52分34秒でスイムフィニッシュし、後方のパックに45秒差をつけてトランジションに向かった。
その後方から、多数のトッププロを含む、Caroline Steffen、Mirinda Carfrae、Joana Lawn、Gina Crawford、Rebekha Keat等が続々とスイムフィニッシュし、トップを行くRachel Joyceを追う展開が始まった。
バイクスタートしてから、すぐにバイクを強みにしているスイス代表Caroline Steffenが、Rachel Joyceに追い付き、二人で協力しながら、後方から追ってくる女子集団を引き離しにかかった。ここでの見所は、古いモデルであるCervelo P4に乗るCaroline Steffenと今年発表されたCervelo P5に乗るRachel Joyceの新旧Cervelo対決が盛り上がっていた。
丁度バイクコースの4分の1を終えた所で、この二人と後方の差が、5分にも開き、コース半分に達したときには、11分の差まで広げることができた。ここで、最優勝候補とされていたMirinda Carfraeに関しては、15分のも差を付けられており、この時点で優勝はだめかと言われていた。
その後に、Caroline Steffenが、Rachel Joyceを引き離そうと、第2集団の男子プロ達に混ざり、ペースを上げ始めた。そのまま、トランジションまでこの男子プロのパックに居残り、驚愕のバイクタイムである4時間35分29秒という、トップの最速タイムと10分程しか違わない、素晴らしいバイクの強さをここで証明した。トランジションに一番手で入り、2位のRachel Joyceとの差を、8分以上の差を開き、余裕を持ってランスタートした。
この時点で、ランを最大の強みとするMirinda Carfraeとの差は29分にもおよび、トップを行くCaroline Steffenに追い付くことは難しいと思われた。去年は、ランパートで怪我から思うようなランが走れていなかったCaroline Steffenだったが、今回はその様子もなくステディーなペースで独走していた。後ろから追いかけるRachel Joyceに関しても、粘り強いランを見せ、トップを追う展開が行われていたが、
最終的には、オフシーズンでのトレーニングの成果を見せ、3時間1分というランタイムで、2012 Ironman Melbourne アジアパシフィックチャンピオンのタイトルをスイス代表Caroline Steffenが見事勝ち取った。フィニッシュラインに向かうCaroline Steffenには、もう一つChrissie Wellingtonが2011年Ironman South Africaで弾き出した、Ironmanレース世界記録達成(8:33:56)の期待が寄せられたが、8時間34分51秒という凄まじいタイムを出したが、1分及ばず記録達成はお預けになった。
その後に、イギリス代表のRachel Joyceが始終2位を独占し走り終え、総合タイム9時間の壁を見事破って入賞を飾った。そして、30分もトップとの差をつけられてしまった、Mirinda Carfraeは得意のランを活かしてトップを追いかけ、26キロ地点までにCarrie Lester、Michelle Vesterby、Rebekah Keat、Joanna Lawnというトップ女子達をごぼう抜きし、ハワイの記録には及ばなかったが、この日のトップランタイムである2時間58分29秒を出し、3位で入賞圏内に入りレースを終えた。
今回、Chrissie Wellingtonが不在の一年になることから、どの女子選手も今年のハワイ選手権に賭ける思いが相当伝わってくるレースになっており、Caroline Steffenに関しては、インタビューにて自分自身が最高のコンディションにあると豪語していたことは、本当であり、今回そのすさまじい強さをこのトップ選手が連なるフィールドで証明してくれた。
女子リザルト
1.Caroline Steffen
00:53:29 | 04:35:29 | 03:01:22 | 08:34:51 |
2.Rachel Joyce
00:52:34 | 04:44:57 | 03:05:02 | 08:46:09 |
3.Mirinda Carfrae
00:53:29 | 05:07:38 | 02:58:29 | 09:04:00 |
4.Joana Lawn
00:53:32 | 05:00:57 | 03:08:29 | 09:06:53 |
5.Gina Crawford
00:53:11 | 05:09:48 | 03:03:42 | 09:11:16 |
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