オーストラリアの主要都市であるメルボルンで、アジア・パシフィック地区選手権として、アイアンマン・メルボルン大会が3月25日に初開催される。
これまでオーストラリア国内では、アイアンマンブランドレースーMelbourne(メルボルン)、Western Australia(西オーストラリア)、Port Macquarie(ポートマッキュリー)、70.3ブランドレースーBusselton(ブッセルトン)、Yeppoon(イェプーン)、 Shepparton(シェパルトン)、 Canberra(キャンベラ)に加えて、Challenge Series等のレースも含め、多数のロングやミドルディスタンスのレースが頻繁に開催されている、トライアスロン大国でもある。
今年は、アジアパシフィックチャンピオンシップという名目で、今年メルボルンで開催するに関して、コナ(ハワイ世界大会)の出場に向けてのポイント稼ぎと高額の賞金を目指して、多数の有名プロが参加することを発表している。その中でも、男子のプロカテゴリーの選手達のハイレベルな層が注目であり、アジアパシフィック地区選手権として、かなり見所がある大会になると思われる。
オフシーズン明けすぐのレースでもあり、それぞれの選手達がオフシーズン中に、どれだけパワーアップしてきているか目安になる大会にもなりそうだ。そして、シーズン早い時期からコナ出場のポイントを稼ぎ、シーズン後半は、ロングのレース出場を避け、オリンピックディスタンスや70.3のレース等でスピードを維持し強化しつつ、ビルドアップして行くことにより、ハワイに向けての体への負担を減らす目的から、多くのトッププロは早い段階でのロングディスタンスの出場を考えているのだろう。そして、このアプローチを取ったとされる、現段階で出場発表している強豪の男子プロ選手達をピックアップして今回は紹介したい。
Craig “Crowie” Alexander (クレッグ・アレキサンダー、通称クローウィー)
言わずと名の知れた、2008、2009、2011年のハワイ世界大会優勝者であり、2011のハワイでは、15年間破られてなかったコースレコードを更新(8時間3分56秒)したトッププロ選手である。
90年代後半から、ショートの選手として出始め、あのGreg Welch、Graig Walton、MIles Stewart、Chris McCormack等のオーストラリア黄金時代の後を追うように飛び出てきたショート出身の選手の一人でもある。
2000年代初期から2006年までは、アメリカ各地で開催されるLife Time Fitnessシリーズで活躍し、シリーズ優勝を達成する等ショートのドラフティングなしのレースでは、3種目共バランス良く強さを持っており、特にランを得意としている。
2006年に、フロリダのクリアウォーターという場所から始まった、第一回目のアイアンマン70.3世界選手権で、優勝している。そして、2011年からは、このアイアンマン70.3世界選手権の場所がラスベガスへと移行されて、ここでも初代優勝者として2度の70.3世界チャンピオンとして君臨している。2009年以降出場した70.3のディスタンスのレースに関しては、全戦不敗を更新中である。アイアンマンレースでとても印象に残るのは、彼のランのスピードとレースでのごぼう抜きする追い上げだろう。
アイアンマンメルボルンでは、絶対的な優勝候補の一人であり、ハワイで証明したバイクの強さをそのままキープし、バイクコースがほぼフラットなので、スイムトップ選手達に付いて行くことができれば、ランの実力を発揮し、優勝も狙えるだろう。総合タイムでアイアンマンブランドレースの世界記録(7時間45分)を樹立することにも大変期待したい。
Pete “PJ” Jacobs (ピート・ジェイコブス、通称ピージェイ)
2004年にプロデビューしてからは、どの予選レースでも、トップ5に入る実力のあった選手だが、実際アイアンマンハワイでは結果を出せていたかった選手であった。毎年経験を積みつつ、2009年ハワイ大会くらいから、持っていたポテンシャルを急激に証明してきた選手であり、2010年と2011年のハワイ世界大会では、 ダークホース的な存在として、優勝の可能性を秘めていることを期待され始めた。
2011年のハワイ世界大会では、バイク終了時13位からの追い上げは無理だろうと精神的に自分のレースは終了だと感じていた彼自身だったが、ランでの好調さから最終的に は、2位でフィニッシュした経歴を持つ、これからの期待の星である。
特に、驚かされたのは、アイアンマンレースでは、ランが最強と言われる Craig Alexanderのランタイムよりも速い記録を2年連続樹立しているという自信もある。スイマー出身であることから、過去のアイアンマン大会では、常に スイムトップ3位以内で上がってくる選手であり、総合的なプロ選手の平均以上のバイクの脚力も持っているので、現時点最速と言われるランでの追い上げが注目である。
メンタルの面で弱い部分を感じるが、メルボルンでは、得意のスイムで有利に持って行き、バイクコースがフラットであるメルボルン大会は、彼にとって優位なバイクタイムを出せるだろう。そして、ランパートでのCraig Alexanderとの対決にとても期待したい所だ。
Luke Mckenzie (ルーク・マッケンジー)
アイアンマンジャパンでは、2008年と2009年優勝しており、2010年はアイアンマンチャイナで優勝している、アジア圏や日本では知名度の高い選手だ。スイムとバイクのコンビネーションは、最強であるが、ランが一番の弱点である。だが、その2種目の強みを生かし、2011年のハワイでは、初トップ10入りを果たした。
いままで、過去のハワイ出場では思うような結果が出せずに、熱さ弱く、いつもランパートで減退していた。そして、怪我に悩まされた2010年のシーズンは、ハワイ出場を欠場する程追い込まれていた。2011年のシーズンでは、いままでの弱さを覆すようなパフォーマンスをハワイで見せてくれたので、2012年の今年も大変期待したい選手である。
去年の12月から、来年のステップアップとして、プロトライアスリートチームのTeam Siriusに所属し始め、女子プロでランの強いMirinda Carfraeや2011年ハワイ3位のLeanda Cave等、主に女子トッププロを指導しているコーチであるSiri Lindleyと共に、ラン強化のためにも、新しいトレーニング方法を模索している所である。この選択が良い方向に行っていれば、ランが強くなった彼の新しい姿をメルボルンで見れることに注目したい。
Greg Bennett (グレッグ・ベネット)
過去の記事で、WTCのルール変更により、5150シリーズ(前Lifetime Fitnessシリーズ)の最終戦であるHy-Vee Triathlonで優勝すると、アイアンマンと70.3の世界選手権に、最低一回予選大会に出場すれば、世界選手権出場権利を得れることに変更になった際、すぐにアイアンマンメルボルンへ出場を決意した。
元オーストラリア代表(現アメリカに帰化)、今年で40歳を迎え、オリンピックディスタンス界では、かなりのベテランである。Chris McCormack、Greg Welch、Craig Alexander等と同様に、90年代後半のオーストラリアの黄金時代を作る架け橋になり、日本の石垣や蒲郡等のレースにも訪れ、98と99年には、オセアニアとオーストラリアチャンピオンになった経歴もある。
元オーストラリア代表のオリンピック出場選手で、アテネに出場経験があり、メダルに届かなかったが、4位に入賞している。
2007年には、アメリカ国内で行われているLifetime Fitnessシリーズで、5ステージ全優勝し、グランドスラムを達成し、2006年から2008年まで3年連続シリーズ優勝もしている、ドランフティングなしのショートのレース界では、最強と言われている選手である。
特に、オリンピックディスタンスを得意としているが、2009年のシーズン中盤8月に車との衝突事故に遭い今シーズンは終わりかと思ったが、回復後すぐ9月に開かれたIronman 70.3 Augustaにチャレンジとして出場し優勝している。そして、同年のIronamn 70.3 世界選手権では、バイクまではトップ集団にいたが、最終的には27位に終わっている。
去年2011年のコナの大会に観戦に来ていて、そこでいい刺激をもらったのもあり、今年のコナ出場を目指してアイアンマン完走し権利を得ることを第一に走るだろう。アイアンマンレースでの彼の実力を始めて見れるレースになるので、どういう展開になるかは未知の世界だが、ベテランとしての経験から、総合的に3種目強い選手なので、自分自身のレース展開に持って行き、初優勝を勝ち取ってくれるのが一番理想だろう。
Clayton Fettel (クレイトン・フェテル)
今回メルボルン大会では、ダークホースとして優勝候補の新人として、今シーズン大変期待される選手である。2010年に本格的にプロ転向以降、怪我等に悩まされてきたが、2011年のシーズン終盤に、その強さを見せてきた。水泳選手としての経歴やITUでのショートのレースでの経験があり、24歳という若さでロングディスタンスに転向後は、得意のスイムとバイクの強さのコンビネーションで、ランで粘るというスタイルを取っている。
ほとんど、オーストラリア国内のレースメインに出場を重ねているが、2010年のアイアンマン70.3ポート・マッコリーでのスイムタイムは、20分45秒という高速スイマーとして証明し、初の70.3のタイトルを勝ち取っている。
去年にあった、アイアンマン西オーストラリアでは、スイムからバイクまでずっとリードを取り優勝するかと思ったが、ランで最後残り10Kの所で、ドイツ代表のTimo Brachtに追いつかれ、2位でフィニッシュした。
メルボルンの2週間前に、Abu Dhabi Triathlon出場決定しているので、どこまで回復できているかが問題だが、レース当日は、必ずスイムトップで上がってき、バイクで引き離し、最後ランで粘るレース展開を見せてくれると思う。ランパートでどこまで粘れるかが優勝の鍵である。
予想
今回は、男子のプロ選手に関しては、2種類のスタイルを戦略としている選手がいる。1つ目は、3種目バランスが良く、最後のランを強みとして持っている、Pete JacobsとCraig Alexander。そして、スイムとバイクのコンビネーションでの強みを生かし、ランで粘るというスタイルを取る、Luke MckenzieとClayton Fettel。
現チャンピオンであるAlexanderが優勝するだろうという期待がほぼ多数だと考えるが、JacobsがどこまでAlexanderにバイクパートで付いて行けるかがJacobsの優勝の分かれ目になるだろうと思う。そして、アイアンマンでは未知の選手であるBennett、スイムバイクコンボを繰り出す、MckenzieとFettelが、ハワイトップ2のレース展開に、刺激を与えてくれることを期待している。
女子のプロ出場選手は、今の所Mirinda CarfraeとJodie Swallowしか発表されていないようなので、他の選手の発表が固まりしだいプレビュー記事を出したいと思う。
Stay Hydrated
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