今年もこの熱い時期がやってきた。アイアンマン世界選手権まで、後2週間となった。世界で戦い、ランキングを制してきた56人のトッププロ男子選手達が、ハワイ島コナの地へと向かう。 その中でも、優勝を目指す注目選手達を紹介したい。
世界王者達のカムバック
Jan Frodeno ヤン・フロディノ(ドイツ)
北京五輪金メダリストとしても名の知れている、ドイツトライアスロン界の英雄が、ハワイの地で3連覇を目指す。2015年に70.3とアイアンマンハワイでダブル世界王者にもなり、2016年のアイアンマンハワイでは、リードを譲ることなく、完璧なレースを見せてくれた。2017年シーズンは、アイアンマン・オーストリアで、世界選手権の出場権を満たした。シーズンを通して、前年よりもロングや70.3レースへの出場を減らし、体への負担を避けることに重視してきている傾向だ。今年のハワイでも、ITUレースで培ったスイムスピードで、先頭集団で上がり、得意のバイクで、高速ランナー達に、どれだけ差をつけられるかが、3連覇への鍵となってくるだろう。
Sebastian Kienle セバスチャン・キーンリ(ドイツ)
2014年の世界王者が、再度タイトル奪還を目指す。スイムの弱点をカバーできる高速バイカーであり、我慢強いランが特徴だ。過去2年間は、スイムタイムの向上を目指し、世界選手権では、その成果が大きく現れた。しかし、バイクでは、先頭集団に上がるものの、いままでのように大きな差をつけられずにいた。その背景として、ロングでは、ランが決定的な優勝への鍵となるため、バイクでなるべく体力を温存し、ランへの脚力を残すのが理由だった。だが、去年の世界選手権では、フロディノと一緒にランをスタートしたが、暑さに悩まされ、うまくペースに乗れず、3位という結果に終わってしまった。今シーズンは、チャレンジ世界選手権で2位となり、70.3世界選手権でも、5位という結果だった。2015年に優勝した時の様に、世界選手権前のレースで、悪い結果であるほど、その年の世界選手権では、良い結果をもたらしてきた。今年もその傾向があるので、最後までキーンリの走りを見逃してはいけない。
地区選手権王者達
Ben Hoffman ベン・ホフマン(アメリカ)
今年の南アフリカ地区選手権王者である通称ホフも、優勝に近い選手だ。多くのアイアンマンタイトルを持ち、2014年の世界選手権で最高位2位となり 、そこから勢いを徐々に見せてきている選手だ。ミスター・オールラウンダーとして、弱点が少なく、3種目ともに安定した力を持つ。今年のシーズンは、ランの走力強化を重点とし、70.3レースでも、その成果が大きく見えてきた。ハワイでは、うまくバイクで先頭集団と一緒に逃げ切れれば、初優勝が必ず見えてくる選手となるだろう。
Matt Hanson マット・ハンソン(アメリカ)
3年前にエイジグルーパーからプロへとステップアップし、プロ2年目で、2014年に北アメリカ地区選手権でタイトルを得た。2016年は、怪我の影響で不調なシーズンを送ってきたが、2017年は、コースレコードと共に、再度北アメリカ地区選手権で優勝した。彼の強さは、ローケイデンスでストライドが長い特徴の高速ランだ。どのレースでも、ランコースレコードやトップランラップを出す脚の速さを持っている。今年は、トップスイマーでバイクコースレコードを持つ元プロのジュリー・ディベンズのコーチングへ変え、特に弱点のスイムを強化してきた。2015年のハワイで遭ったコーナーでクラッシュするようなアクシデントを避けることができれば、弱点のスイムから、キーンリと一緒にバイクで追い上げ、ラン勝負になった時には目を離せない存在になる。
Tim Don ティム・ドン(イギリス)
今年は、いままで以上の好調さを見せているドンに優勝への期待。アイアンマン・ブラジルの南アメリカ地区選手権では、アイアンマン世界コースレコード7時間40分で更新し優勝。こてまでITU上がりの速さを活かし、数々の70.3レースでも、実力を見せ、70.3世界でも3位入賞した。コースレコードの出した時のような雨天だったが、ハワイのような灼熱の違う環境で、自身の実力をどれだけ出せるかに注目だ。
Josh Amberger ジョシュ・アンバーガー(オーストラリア)
スイムとバイクのコンボでは、誰にも負けない速さを持つアンバーガーの世界選手権初出場に期待がかる。これまで70.3レースで実力を見せて来たが、弱点のランでいつも優勝を逃して来た。しかし、今年は違う名コーチのブレット・サットンの弟子であるキャメロン・ワッツのコーチング下で、相当パワーアップした。そ成果として、今年はアイアンマン・ケアンズでアジアパシフィック地区王者となり、他の強豪を抑える強さを見せた。ハワイでは、必ずスイムトップであがり、バイクで大きな差をつけることができれば、ランで逃げ切り優勝ということにもなり得るだろう。
高速ランナー組
Lionel Sanders ライオネル・サンダース(カナダ)
今では名の知れたプロであるサンダースが、ハワイで再度実力を試す。今年は、負けなしの成績で、チャレンジとITUロングディスタンスの両世界選手権で優勝。言わずと知れた、パワフルなバイクと高速ランが強みだ。バイクは、キーンリと並ぶ速さを持ち、アベ300ワット以上で、180キロを激走する力がある。バイクの力だけではなく、ランが得意でもあり、調子が良ければ、2時間40分切りも可能だ。これまでのハワイでは、怪我の影響で本来の実力を出せずにいたが、今年こそは、優勝争いに絡んでほしい存在だ。
Patrick Lange パトリック・ラング(ドイツ)
去年初出場でアイアンマンレジェンドのマーク・アレンが持つランコースレコードを更新し、2位入賞したドイツのミスターランナーアップに大きな優勝の期待がかかる。去年は、北アメリカ地区選手権で旋風のごとく現れ、初アイアンマンで見事優勝。コーチは、2005年アイアンマン世界王者のファリス・アルサルタンだ。今シーズンは、怪我の影響もあり、ビッグレースに出場することを控えていた。ハワイ出場権を得るために、アイアンマン欧州地区選手権に出場し、バイクでは先頭を引っ張る姿を見せたが、ランで本来の調子を出せず6位で終えた。去年のハワイでは、バイクで5分のドラフティングペナルティーを取られていなければ、優勝していたかもしれない。スイムとバイクでも、先頭パックで争える力があり、去年同様のランで走ることができれば、優勝が見えてくるだろう。
Brent McMahon ブレント・マクマホーン(カナダ)
元五輪代表で、ITU界のレジェンドのサイモン・ウィットフィールドをアシスト役として支えてきたマクマホーンが、再度ハワイで実力を試す。70.3レースでは、多くの成績をのこしてきた。今年は、アイアンマン・レイクプラシドで、コースレコード更新し優勝。弱点であるバイクを克服し、先頭パックで競う力を得てきた。ITUで得たスピードを生かし、得意であるランで、どのようなパフォーマンスを見せられるかに注目だ。
要注意選手
Nick Kastelein ニック・カスティレイン(オーストラリア)
現世界王者のフロディノのトレーニングパートナーであり、まだ29歳という若さで、将来有望されている一人だ。今年は、アイアンマン70.3バルセロナで、バイクでクラッシュし、鎖骨を折りながらも、フロディノに続き、2位に入賞したタフな選手だ。その1ヶ月後には、アイアンマン・スイスに出場し、得意のバイクで引き離し、ランでも衰えることなく、見事に優勝。得意のバイクでうまくトップ集団につくことができれば、あとはラン勝負となるが、ハワイ初出場なので、ハワイの暑さの下で、どういうパフォーマンス見せてくれるのか楽しみな選手だ。
Braden Currie ブラッデン・カーリー(ニュージーランド)
今年のアイアンマン・ニュージーランド王者が、ハワイでその隠れた才能を試すときがきた。マルチスポーツな選手で、レッドブル主催のカヤックレースや主にオフロードトライアスロンのエキステラで数々の入賞を重ねてきた。2年前に70.3レースへ出場し始め、2016年には、地元で優勝している。今年は、目標をアイアンマンへとシフトし、アイアンマン・ニュージーランド優勝し、アジアパシフィック選手権でも、素晴らしいランスピードを見せ、3位入賞。3種目ともに、バランスの良い選手なので、同郷のキャメロン・ブラウンのような戦略的でステディーなパフォーマンスが、彼の入賞の可能性にかかっている。
Patrik Nilsson パトリック・ニルソン(スウェーデン)
ここ数年で、大きな成長を見せている選手の一人であるニルソンも危ない選手の一人だ。去年は、バルセロナとコペンハーゲンのアイアンマンで優勝し、8時間きりの速さで、その実力を証明している。得意とするランは、このフィールドの中でもトップの速さを持っている。今年の欧州地区選手権では、バイクで大幅に遅れながらも、ランで順位を上げ、ランラップ2時間40分で3位入賞。常に、どのレースでも、2時間40分前半で走れるので、必ず脅威となる選手になるだろう。
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