これまでのアイアンマン・ハワイのバイクカウントでは、カナダ出身のバイクブランドCervelo(サーベロ)が、ダントツの一位をずっと維持してきた。2000年代のPシリーズ発表以降、タイムトライアル/トライアスロンバイク作りの最先端をリードしてきたCerveloが、4年ぶりに新しいトライアスロンバイクP5Xを、このアイアンマン・ハワイが開催されるハワイ島コナで発表した。
噂ではP6とうネーミングでないのかと憶測があった。Cerveloは、5つ星ホテルのように、最上級モデルとして、P5の名を残し、Xをつけることで無限のバイクとして、P5Xとなった。今後発表されるPシリーズは、Xの部分が付け加わってり、名前が変わってくるみたいだ。低価版P5XのP3X?のように、なってくるのかもしれない。
この発表までには、多くの時間がかかった。開発やデザインには、3年間。空力トンネルでは、180時間も及ぶ、エアロテストを重ねた。そして、去年10月のハワイから140.6日後に、何か新しい製品を発表するとカウントダウンが始まった。だが、そのカウントダウンのタイムリミットが来ても、発表されることはなかった。その時は、デザイン変更の関係での延期という理由だった。
その裏事情は、何が発端になったのかわからない。だが、今日この新しいP5Xを見たときに、その完成度の高さから、発表を延期した理由が納得できた。エアロ、ストレージ、フィッテイグ、パッキングなどの多面で最大限にこだわり、アスリートのためのパーソナルベストに貢献するため、他社のスーパーバイクとは比べものにならないトライアスロンのためのエキストリームバイクとして、生まれ変わっていた。
フレームデザイン
まず、サーベロがこだわったのが、トライアスロン業界でトレンドとなっている、UCI規定を無視したバイクをとことん作ることに専念した。実は20年前に、Cerveloは、UCI規定を無視したグリーンカラーのBaracciというバイクを制作したことがある。それに、このバイクとP5Xを比べてみると、フレームのデザインなど、多くの要素がBarracciのオリジナルデザインからP5Xへ取り込まれいる様に見える。
フレームデザインの工程で、まずCerveloが考えたのは、他社の協力を借りて、さらに良い製品を作ることだった。その一つが、ホイールやパーツデザインで有名なブランドHEDだ。HEDは、ホイールで名のしれたビッグブランドだが、そのフレーム制作の技術もCerveloが信頼するほどの会社だ。フレーム制作工程では、米国のミネソタ州にある制作工場で、ハンドメイドで一本づつ綺麗な湾曲を作りながら制作された。それによって、これまで中国産だったCervelo車も、P5Xからは、ハイクオリティーのMADE IN USAということになった。
そして、同様にホイール、フォークやパーツ制作に強いEnveの力も借りた。特にEnveはフレーム制作よりかは、フォークやハンドルバーを制作する部分で、大きな強みを持っている。そのため、P5Xには、ハンドルバーが真っ二つに分かれる施工がされたり、パットの調整域も幅が広い。そして、付属してくるEnveのSES 7.8ホイールも、レールを進むようにスムーズに走ってくれる一級品のホイールだ。
ーハイドレーション
このフレームデザインには、ただ単にエアロダイナミックに、こだわっただけではない。この3年間、アイアンマンや70.3レースで、14,500枚以上の写真を撮り、一枚づつそのバイクの特徴を研究し、そこからトライアスリートにとって何が必要なのかを探り始めた。その結果としてボトルは、P4の様なエアロボトルよりも、エイドでももらうような必ず普通の丸いボトルでなければならないことがわかった。そして、どの選手達も、2つボトルケージをつけていることが多い。(詳細な研究結果は、後ほど)
まず、収納に必要なのは、チューブ、2本のCO2、Co2アダプター、2本のブレーキレバー、マルチツールなどが必需品だ。だが、P5には、それを収納するスペースがなく、ボトル型の収納を使ったり、サドルバッグを使う必要がある。だが、Cerveloは、エアロにも最大限こだわるために、フレームのクランク前方に大きな収納庫を作った。ここには、上記の必需品だけではなく、しっかりチューブラータイヤも収納できるように、考えられた大きさとなっている。
もう一つの収納場所は、クランク上の部分だ。ここにも必需品を収納できることが可能だが、トレーニングやレースの時の補給収納スペースとして使用できる。そして、その上には、ボトルケージを取り付けることができる。
過去にもここでどこにボトルケージを取り付けるかが一番ベストなのかと紹介した通り、やはりBTA(エアロバーの間)に平行に取り付けるのが、一番エアロ効果が出るという結果で、今回P5Xのボトルマウンとも、P5同様の位置に設置できるようになっている。そして、サドル後ろにも、専用のボトルホルダーが付いているので、合計で3つ取り付けられる。
ーディスクブレーキ
このバイクで、一番気になった点は、ディスクブレーキになったことだろう。これまでロードバイクでは、リムブレーキが主流で、マウンテンバイクやサイクルクロスバイクでは、ディスクブレーキが多用されてきた。しかし、近年ロードでもディスクブレーキ対応のフレームが出回り始めたことで、先日発表されたParleeやDiamondbackのトライアスロンバイクもディスクブレーキ専用となっている。それに、過去にもP4のリアブレーキ性能の悪さがあったり、P5発表で開発したMagura RTシリーズの油圧ブレーキも、漏れたり、ホースが切れたりという事件もあった。だが、ディスクブレーキは、車やオートバイに使われるブレーキと同じ特徴なので、ウェットやダートなコンディションでも、しっかりとブレーキ性能が働いてくれるので、大きな信頼性がある。
個人的には、ディスクブレーキのレスポンスや握り心地は、リムブレーキに比べて、軽くて握りやすく、少しの力でブレーキに大きな力が伝わる。特に、SramやShimanoのハイエンドモデルのディスクブレーキになると、その握りやすいさは、さらに大きく変わってくるだろう。しかし、遠征の際やバイククラッシュした時、ブレーキのローターが曲がったり、油をさしてしまってブレーキ音がうるさくなったりと、個人での調整やクリーニングは、大変な点もあるだろう。その時は、必ずプロメカニックにお任せしたほうが良い。
ディスクブレーキにも、メカニカル(ケーブル)とハドロリック(油圧)の2種類ある。P5Xには、両タイプ装着可能だが、完成車にはメカニックにも優しいメカニカル仕様となっている。
今回P5Xのに付属してくるのは、メカニカルのTRPのダイレクトマウント式油圧転換ディスクブレーキキャリパーだ。このTRPのブレーキは、ブレーキバーからブレーキ本体までケーブルを通しているが、ブレーキ本体が油圧コンバーターとなっているので、握りはものすごく軽い。もちろん、SramやShimanoなど、他ブランドの製品も、このP5Xに装着可能だ。今後は、完全油圧式のエアロブレーキレバーに対応したMaguraの様なエアロブレーキレバーも発表する予定だ。
パート2は、バイクフィッテングやパッキングについて近日公開!
0 comments on “CERVELO P5Xデビュー(パート1)”