トライアスロンバイクへの発展(パート1)

近年、トライアスロンというスポーツの知名度や競技人口が増えるにつれ、大手バイクメーカー側のマーケティングやプロダクションも大きく変わり、トライアスロンマーケットへ力を注ぐ新しい商品やブランドも続々と現れてきている。

その中で、トライアスロンで使用するバイクといえば、全般的にタイムトライアルバイクという用語が使われてきた。だが、現在では、トライアスロンバイクとしてカテゴリーが、長年の月日を経て、ようやく確立されてきている。この背景には、80年代や90年代早期から、多くの素晴らしいアイデアがあったにもかかわらず、大規模なロードバイクマーケットの規定などに縛られてきたことが要因でもあり、大手のブランドは、トライアスロンに特化したバイク製作することに、時間やコストを費やすことが難しかった。

現在、トライアスロンマーケットが大きくなるにつれ、これまでトライアスロンバイクというカテゴリーにたどり着くまで、どのように発展してきたのか、その歴史や背景などを探ってみた。

UCIロードレース規定の壁

エイジ選手が出場することの多いノンドラフティングレース(特にアイアンマンレースやローカルレースなど)では、各レースでの規定や各国トライアスロン協会で定めた規定、そして世界基準で決められたITU(世界トライアスロン連合)ルールなどに従うことが多い。そして、ロードバイクレースの様に、バイクパートを集団で競うドラフティングレースでは、ITUルールの中で、UCI規定を採用し適用されることがある。

これまで、トライアスロンレースで仕様するバイクといえば、ロードバイクまたは、タイムトライアルバイクが使われてきた。実際、自転車のロードバイクレース界では、タイムトライアルという時間の速さを競う種目があり、ここではタイムトライアルバイク(TTバイク)という専用のバイクを使用する。

すべての選手に公平さや共通の安全基準を持たせるためにUCIで決められた規定範囲を元に、各メーカーはバイクデザインやジオメトリーを考え、ライダーもバイクフィティングを、下記のUCI規定の数例に合わせなければならない。

3:1割合:フレームのチューブが、縦幅3に対して横幅1の割合でなければならない。そして、フレームデザインが、トライアングルに近いデザインでなければならない。

UCI3:1Regulationカバー禁止:フレームから露出しているブレーキパーツやケーブル、ボルトの穴などを、シールや専用パーツでのカバーは禁止。

UCIFrameCoverRegulation

UCIRegulationSealCover

例外として、下記の写真の様な近年流行しているフォークやフレームと一体型になっているブレーキパーツに対しては、使用許可されている。

UCIAllowedBrakeCover

ボトルとフレームの一体型禁止:フレームのデザインに合う専用ボトルを使用してはならない。例えば、Cervelo P4の専用エアロボトルなどは、UCIレースでは使用禁止だ。

cervelop4specificbottleimage

そのため、パーツメーカーのEliteArundelなどのエアロボトルを使用するケースが多い。

UCIRegulatedUCIbottle

バイクジオメトリーの規定:UCI規定では、バイクのポジションやジオメトリーの規定も、公平さを出すために、下記の様に細かく設定されている。

UCI Guidelins for Tri Bike

他にも多くの細かいルール設定がされているが、上記の数例を読んだだけでも、バイクメーカーにとっては、限られた範囲での製作を余儀なくされていることがわかる。

この様なロードバイクレースに比べて、UCI国際自転車競技連合)規定の縛りがなく、どのバイクメーカーにとって、自由なデザインや斬新なアイデアを、ドリームプロジェクトとして取り入れられる唯一のスポーツがトライアスロンだというのがわかるだろう。

そこで次に、タイムトライアルバイクやトライアスロンバイクは、どの様に歴史上発展してきたのだろうか。

タイムトライアルバイクアイデアの発端

80年代に、タイムトライアルバイク発展のアイデアを、最初に考案した先駆者は、サイクリングペダルで有名なブランド・スピードプレイの発明者でもあるRichard Bryne(リチャード・ブライン)だ。速さと時間を求めるために、多くの選手とともに、バイク開発に携わってきた人物だ。

長年のロードバイクの歴史では、シートチューブ角度の72度が、標準だとされてきた。シードポスト角度72度は、バイクハンドリングを操るには理想の数字だとされていたが、その角度で絶対ならないという理由は、過去100年のフレーム製作歴史を調べても裏ずけるものはなかった。

80年代早々から、スピードとタイムを求めていたブラインは、1983年に、歴史上1号とされるエアロバーを開発したり、当時プロサイクリストのJim Elliott(ジム・エリオット)のために、シートチューブ角度81.5度のバイクOuiga Bikeを作製し、この新しいアイデアが詰まったバイクに乗せ、24時間トラックレコードへ挑戦させた。その結果、前総合距離レコード454マイルから、504マイルへ記録更新し、大きな違いをもたらしたのだ。

firsttimetrialbike

トライアスロンバイク誕生のきっかけ

しかし、ブラインとは違うアイデアを提唱し始めたのが、トライアスロン界の重鎮であるDan Empfield(ダン・エンプフィールド)氏だ。トライアスロンバイクブランドQuintana Rooの創立者であり、初めてトライアスリートのためのバイクフィティングシステム(F.I.S.T)を考案し、トライアスロン用ウェットスーツの製作に携わるという、トライアスロンマーケットを開拓してきた一人だ。その後も、トライアスロン情報メディアサイトSlowtwtich.comを創立するなど、現在もトライアスロン業界に大きな影響をもたらしている。

80年代終わりに、ScottDHエアロバーが、トライアスロン界で大流行していた。だが、シートチューブ72度のロードバイクで、エアロバーを使用するとシートからのリーチが長いため、空気抵抗や快適性を気にする所か、かなりハードなポジションであった。

ScottDHBar

実際、トライアスロンバイク作成のアイデアのもとは、あるプロ選手達がきっかけになったと言われている。1988年頃に開催されたトライアスロンレースで、米国出身のプロトライスリートMike Pigg(マイク・ピッグ)が、極端にバイクサドル先端に座りながらバイクを漕いでいるという、衝撃的な光景が目撃された。

MikePiggSaddleForward

そして、当時現役プロトライアスリートであったアイアンマン界の伝説選手Mark Allen(マーク・アレン)は、この問題を解決するために、プロファイルデザイン作成のFast Fowardシートポスト使用して、サドル位置を前方へ出していた。同じ時代に活躍したプロトライアスリートのPauli Kiuru(ポーリ・キウル)は、通常のロードシートポストのセットバックを逆にして、サドルを前方に出していた事実もある。

この3人のシートチューブ角度を調べて見ると、78度から80度のシート角度で乗っていることがわかった。それを元に打ち出た理論の一つとして、サドル前方で乗る(シート角度を広げる)ことで、バイクでの無駄な筋肉疲労を少なくし、ランにパワーを温存できるのではないかという仮定を立てた。

80度のシート角度ポジションで、エアロバーを使用することで、効率的に上半身を安定させることができ、脚と尻の筋肉を効率的に機能させることができることがわかってきた。しかし、当時ブラインが考案した急すぎるシート角度のバイクデザインとエアロバーを使用する二つのアイデアが、相互に機能し合うことが難しかった。

それぞれの問題やアイデアを元に、エンプフィールドは、バイク理論も研究し始め、シートポストなどのパーツを交換することなく、エアロポジションに最適なバイクフレームデザインとジオメトリーの作成を始めた。

この新しいコンセプトのバイクフレームでは、80度のシート角度フレームでも、ハンドリングがし易いように、新しいバイクジオメトリーも打ち出し、1988年にトライアスロンに最も特化したバイクQuitana Roo Superformが発明された。

quintanaroosuperform

これの理論を証明するために、この新しいバイクを当時のプロアスリートRay Browningに提供し、アイアンマンニュージーランドに出場した。そのレースでは、当時強豪プロScott Tinleyに30分以上の差をつけ、バイクレコードを塗り替えた。

Reference:

  1. Was The First Aerobar Really Not The First? : http://triathlon.competitor.com/2010/07/insidetri/was-the-first-aerobar-really-not-the-first_11039
  2. Forward Thinking: The Evolution Of The Triathlon Bike: http://triathlon.competitor.com/2010/12/gear-tech/forward-thinking-the-evolution-of-the-triathlon-bike_21666#zwG2rqF1zLWX9AUt.99
  3. UCI Equipment Regulation: http://www.uci.ch/mm/Document/News/Rulesandregulation/16/51/61/Clarificationguideofrules2012-ENG_English.PDF

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