ドイツ出身ブランドであるCanyon(キャニオン)が、新しいトライアスロンバイクのプロトタイプを、7月に開催されたアイアンマン・フランクフルトのヨーロッパ地区選手権にて初公開した。北京五輪金メダリストでIM世界3位のドイツ代表Jan Frodeno(ヤン・フロデノ)が、このバイクへ初乗りし、バイクコースレーコード4時間8分と共に初優勝を収めた。去年までSpecializedライダーだったが、今年はCanyonをバイクスポンサーを迎え、飛躍の年として順調なスタートをしている。
去年発表されたScott Plasma 5を使用している現アイアンマン世界王者ドイツ代表Sebastian Kienle(セバスチャン・キーンル)は、この大会でも最速サイクリストとして記録更新に期待がかかる中、フロデノのバイクタイムに及ぶことなく、2位入賞で終えている。
そして、再度Canyonが、大きな成功を収めたのが、翌月に開催されたヨーロッパ最大級レースChallenge Rothで、2015年IM6位であるCanyonライダーのドイツ代表Nills Frommhold(ニルズ・フロムホールド)が、同じプロトタイプのバイクに乗り優勝を果たした。
その大会では、現アイアンマンバイクコースレコードを持つアメリカ代表Andrew Starykowicz(アンドリュー・スターリコウィッズ)が新モデルのOrbea Orduで出場しており、その際バイクコースレコード4:09:13を更新している。だが、優勝したフロムホールドは、バイクラップ4:09:30で、スターリコウィズと17秒差しか変わらないタイムでほぼ同じ実力を持つ選手だ。そして、ランでは、怪我の影響もあっためスターリコウィズは、入賞から遠のいたが、フロムホールドは、今年のアイアンマン・メルボルンの時の様に、ランで順位を落とすことなく、ランタイム2時間51分で走りきっている。
2人に共通しているのは、フィジカルも190cm近い長身のITU出身選手で、同じプロトタイプのバイクに乗り、レースでの天候などのコンディションも近かったことだ。そして、バイク後のランタイム 2時間50分台という記録を見ても、まだ乗り慣れていないだろう新しいプロトタイプのバイクでロスを作ることなく、順調にレースを進められたのも、何だかの利点がバイク構造やエアロダイナミクスに反映されているのだろうかと思わせる。実際、Canyonのバイクと他ブランドのバイクの違いを検証付ける研究結果はでてないが、Canyonバイクは、旧モデルから、何が大きく変わったのだろう。
フレーム
3月のオーシャンサイドで使用していたCanyon Speedmaxと比べ、フレームも大きく改良されている。現モデルのSpeedmaxは、ロードのタイムトライアル向けに考えられているのか、シート角度が後方傾き気味だ。しかし、このプロトタイプは、写真を見ても、旧バイクよりも、前方へシート角度が傾いてるように見えるため、バイクジオメトリーの詳細は不明だが、トライアスロンバイクとして考えられている設計になっているのかもしれない。そのため、乗り心地やランの脚をセーブできたことで、選手達に大きな変化が出たのだろうか。
ハイドレーション
一番目が付く所は、フロント部分だろう。このハイドレーションタイプの先手を行くScott Plasma 5に似たような装備を付けている。しかし、まったく一緒のハイドレーションを使用しているわけではなく、Canyonの方がトップチューブのボックスに高さがあるが長さが短く、ヘッドチューブ前のボックスには、給水ができるようにチューブが飛び出ている。そして、ガーミン製のメーターをつけられるように、台座も完備している。このハイドレーションパーツは、Scottの様にプロファイルデザインとの共同開発しているものなのか、それとも自社で製作しているのかはまだ不明だ。
さらに、Scottにはない新しい仕様が一つある。それが、シート前のトップチューブ後方にできたストレージボックスだ。三角形のフレーム部分の中に、ボンベやチューブなどを収納できるようになっている。
現在、メディア露出が多いビッグレースで、プロトタイプながらも新しいバイクに試乗させ、バイクパートでどれだけ速いのかを証明するのが、バイクブランドにとっても一番手っ取り早い広告手段となっている。これからハワイの世界選手権に向けて、多くのバイクブランドが新しいトライアスロンバイクを発表すると思われるが、このCanyonのプロトタイプが、生産段階のバイクになった時、シンプルな仕様で一般ライダーに好まれるカラーデザインになっているのかが、今後のブランド競争に大きく関わってくるだろう。
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