今年のレースシーズンを通して、これから期待の注目選手が、続々とその高いパフォーマンス力を見せ初めてきた。去年は、アイアンマンレースの最速バイクレコードを持つアメリカ代表Andrew Starykowicz(アンドリュー・スタリコウィズ)や、2013年IMメルボルンで突如初優勝を果たしたイギリス代表Corrine Abraham(コリン・エイブラハム)を始め、ローカルレースやエイジグループ優勝を重ねてきた、ポテンシャルを持つ選手達が多く登場してきたのも事実だ。だが、この2人の選手だけではなく、これからトライアスロンレースシーンに刺激を与え、有望視される選手達が、次々と芽を見せ始めている。
Lionel Sanders(ライオネル・サンダーズ)カナダ代表
去年までは、苦手なスイムとバイクで、自身の持つランニングのポテンシャルパワーを最大限に発揮できずに、主に70.3レースでのトップ10へ入ることが精一杯だった。だが、今年のSandersは、去年のパフォーマンス力をレベルアップさせ、苦手のスイムをカバーするさらなるバイクとランスピードを獲始めた。その勢いで、常にランをサブ1時間10分で走れる脚力を見せるパフォーマンスで、確実な優勝をIronman 70.3 Muncie、Racine、Steelheadの3連戦連勝を重ねてきた。
元々ハイスクールクロスカントリーランナーとして実力があったものの、一度はスポーツから離れ、パーティーやお酒に埋もれた大学生活を送っていた。それから突然、2010年のIronman Louisvilleに挑戦したことが、トライアスリートとしての道を開き始め、今やこの4年間という短い期間で、エイジからトッププロクラスまで上がりつめてきた。トライアスロン界最速ランナーとして活躍を見せているドイツ代表Michael Raelertやオーストラリア代表Craig Alexanderに対等するスピードを持っている。ハーフマラソン単体でも、1時間5分台で走りきる実力があり、トライアスロンレースで、最後ランニング勝負に持っていったら、他に対等できる選手は少ないだろう。今年は、9月開催されるIM70.3世界選手権出場をするので、優勝候補として大きな注目を浴びる。
Kyle Buckingham(カイル・バッキンガム)南アフリカ代表
5年前に、トライアスロンを始め、初トライアスロンレースが、アイアンマンレースで、エイジデビューを飾った。Buckinghamは、着々と5年間をかけて、そのポテンシャルを最大限に成長させ、昨年の2013年Ironman世界選手権では、エイジ総合優勝タイム8時間37分で、エイジコースレーコド更新と共に、プロを合わせて総合16位でフィニッシュした。このスーパーエイジ選手から、プロトライアスリートへと、今年から転向した後も、その勢いは止まらずに、Ironman南アフリカ3位に入賞し、プロとして恥じない結果でシーズンを順調にスタートさせた。
先月開催されたIronman Lake Placidでは、プロ1年目にして、初優勝を飾り、勢いをさらに増すパフォーマンスを見せた。元々プロサーファー志望であったため、オープンウォタースイムについては、まったく問題ないスイムスピードとオープンウォーターでの経験を持ち、次に得意とするバイクでは、180キロを4時間40分代を切れる脚力のまま、サブ3時間のランを走れることを武器にして、3種目共バランスの取れたパフォーマンスを実証してきた。今年は、Ironman Lake Placid優勝を期に、7月時点のプロランキング34位で、Ironman世界選手権の出場権を獲た。再度ハワイの地で、プロ転向1年目に、どれだけパワーアップしてきたかが、とても期待される選手だ。
Rodolphe Von Berg(ラドロフ・ボンバーグ)アメリカ代表
現在コロラド州のコロラド大学のトライアスロン部を率いるリーダー格でもある、20歳という若い有望学生選手である。今年は、大学2年生で、アメリカ国内のインカレ個人優勝し、大学対抗レースでもチームを優勝に導いた。4月に行われたノンドラフティングのオリンピックディスタンスレースであるSt. Anthony Triathlonでは、トップ3に、オーストラリア代表Brad Kahlefeldt(ブラッド・カールフェルド)、優勝したスイス代表Ruedi Wild(ルディ・ワイルド)、アメリカ代表Hunter Kamper(ハンター・ケンパー)を含むプロフィールドに混ざり、4位に入賞した。その後も5150シリーズレースで、トップ5に入賞する成績を作り始め、その素晴らしいポテンシャルを20歳の若さで証明して来た。
多くのプロ選手が、練習拠点として、コロラド州ボルダーでのトレーニングを重ねる、恵まれた環境下で、大学在学中から、パーティー等の誘惑に負けず、日々練習を続けてきている。元Ironman王者達であるWolfgang Dittrich(ウォルフガング・ディトリッチ)やDave Scott(デーブ・スコット)をコーチに迎えるスイム練習会に参加し、レベルの高い大学チームメートとのバイクやランで日々レベルアップを続けている。今年開催されるHy-Vee 5150世界選手権(ノンドラフティング・オリンピックディスタンスレース)へ、プロカテゴリーで出場し、ITUフィールドでコンチネンタルカップやワールドカップへ出場をすすめる予定だ。最終的には、世界選手権シリーズへ参戦することを目標とし、現在オリンピアンであるイギリス代表Tim Don(ティム・ドン)等のトップアスリートと練習も重ね、2016年リオオリンピック出場権を得るための準備を進めている、大注目のアメリカ代表選手だ。
Liz Lyles(リズ・ライリズ)アメリカ代表
これから期待される新人は、若手だけではなく、プロ女子のLylesは、2012年に36歳でブロデビューをし、デビュー戦のIronman Wisconsinで初優勝を飾った。2002年にトライアスロンデビューをしてから、エイジ選手として、各地の大会でエイジ優勝を重ねてきた。プロデビュー前には、子作りのため2年間トライアスロンから離れたものの、トライアスロンレース復活は、プロカテゴリーでカムバックを果たし、その素晴らしいパフォーマンスを証明してきた。
エイジからプロへの転向から大きな違和感を持つことなく、2013年シーズンでは、Ironman 70.3 BoiseやIronman西オーストラリアにて、優勝を重ね、常にトップ争いのできるポテンシャルを持つ選手として成長し始めた。高校時代は、水泳とサッカーをしていたため、スイムは問題なくトップ集団で上がる上に、特にランニングに一番強みを持っている。マラソン単体では、2時間50分41秒の自己記録を持ち、トライアスロンレースでも、常にランニングで追い上げを見せるパフォーマンスを兼ね備えている。今年は、強豪の集まるIronman Frankfurtのヨーロッパ地区選手権にて、総合タイム9時間を切る、8時間56分で、2位に入賞し、今も38歳という年齢ながら成長を続けている。今年のIM世界選手権に出場を決めているので、今回どこまでプロカテゴリーでそのポテンシャルを見せられるかが注目だ。
Danielle Kehoe(ダニエル・キーホー)アメリカ代表
2012年のエイジカテゴリーで、IM世界選手権エイジ女子総合2位、IM70.3世界選手権エイジ女子総合1位というリザルトで、確実な実力を証明し始めてきた。2013年に、プロ転向をしてから、トップ5に入るレースを重ね、プロカテゴリーでの優勝を目指して、着々と成長してきた。
スイムに弱点があるものの、その遅れを、得意のバイクパートで、4時間50分代で走るタイムを出す実力を持っている。先日初開催されたIronman Boulderでは、有力候補の集まるフィールドの中で、注目されていなかったものの、そのバイクの速さが大きな優勝への鍵となり、ランでもスピードを落とさずに、プロデビュー後初のアイアンマンレースで優勝を果たした。まだ27歳という若さなので、これから徐々に苦手なスイムを克服し、ランニングを強化してくれば、将来世界選手権での優勝を狙うことも難しくはないだろう。
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