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2013 Ironman Hawaii世界選手権プレビュー

2013IronmanWCLogo

今年も天候とレース共に、熱い戦いが繰り広げられる2013 Ironman Hawaii World Championshipが、ハワイ州コナに移されてから、35周年迎えた記念大会として、過去以上の盛り上げを見せる。この地にたどり着くまでに、特にプロ選手達は、各レースでコツコツとポイントを稼ぎ、プロコナランキング上位女子35位、男子50位以内に、這い上がってきた。そして、最終的に、数々の強豪選手達が集い、誰が月桂葉の王冠を今年被るのかが、とても注目だ。

今年の選手層としては、ロンドンオリンピックが終わった後を、良いタイミングに、ITU界からロングディスタンスへの転向する選手が多く、更なるスピードを試されるレース展開になると思われる。そして、事故や怪我に悩まされる選手が多発する中で、この世界選手権までに、どれだけヘルシーな体力作りをしてきたのかが、大きくパフォーマンスへ影響する機転となるだろう。

シーズンを順調に過ごしてきたものの、やはり不調を訴えるアスリート達も多く、優勝候補とされる選手達の不参加も目立っているのが現実だ。

今年でハワイ出場は最後と語っていた、カリスマ的存在のオーストラリア代表Chris McCormack(クリス・マコーマック)は、3週間前に、順調にトレーニングを重ねていたが、エプスタイン・バーウイルスという、疲れが取れない状況が続く病気を煩い、1ヶ月程の休養が必要な程のドクターストップがかかってしまい、残念ながら出場辞退することになった。

2012IMWCMarino

そして、去年のハワイでは、凄まじいバイクスピードで、最速バイクラップを取ったものの、リタイアでレースを終え、ポイントを得れることなく、振り出しに戻る結果となった、ベルギー代表Marino Vanhoenacker(マリノ・バンホナッカー)も、今年最も重要視していたIronman Frankfurtレース前に、股関節の疲労骨折で、順調なシーズンを送れずに、ランキング外に弾かれてしまい、出場権を得ることも不可能となってしまった。

今年のIronman Melbourneにて、初優勝をし、アジアパシフィック王者に輝き、無名の選手でもあったイギリス代表Corinne Abrahamも、ハワイ出場権の最終申請する8月に、怪我を煩い、自ら出場を辞退し、自分の出場権を無駄にすることないように、他のプロアスリートへ与える選択をした。

プロ女子

Caroline Steffenーキャロライン・シュテファン(スイス)

今年最も優勝に近い選手であり、前年度世界選手権2位で、最強トライアスロンチームTeam TBB所属、通称SwissMiss(スイスミス)に、去年以上の大きな期待がかかる。去年は、元スイマーで、元サイクリストでもあった実力を見せ、先頭を始終リードしていたが、バイクでの4分間ペナルティーで、大きなチャンスの逃した結果が、ランの最後数キロを残す所で、優勝者Caveに、リードを奪われ優勝を逃してしまった。その経験を元に、今年は、ランを強化する中、特に実力を発揮する独占的なバイクスピードで、Challenge RothIronman 70.3 Phillipineで、大幅な差をつけ優勝を重ねた。去年のシーズンは、3つ以上のロングディスタンスレースへの出場で連戦してきたが、今年はレースの出場数を少なくしたことで、確実にこの世界選手権に向けてのコンディション作りを考えて仕上げてきているに違いない。レース当日は、得意のバイクで大幅な差をつけることができれば、熱さに負けずに、強化してきたランで、そのまま優勝まで突き進むだろう。

Rachael Joyceーレイチェル・ジョイス(イギリス)

今年は、3月のIronman 70.3 Oceansideで、7位入賞と言う結果からのシーズンイン後、Ironman Texasでの余裕の優勝以降は、大規模なレースに出ることもなく、とても静かなシーズンを送っていた。去年の世界選手権では、優勝候補として期待されていたものの、気管支炎に悩まされ、その事実もレース後も隠し続けていた。その渦中で、トレーニングを積んでいった結果、やはり調子の良さを見せられずに、11位で終えてしまったことで、過去のハワイでのパフォーマンスの中では、自身最悪のリザルトでもあったことに悔しさが残った。これを機に、今年から新しいコーチとして伝説のトライアスリートDave Scott(デイブ・スコット)の元でトレーニングを重ね始め、しっかりと体を休めるリカバリーに重心を置き、レース出場も少なめにし、トレーニング中心の生活で、このメインレースである世界選手権へ最大限の準備を進めてきた。実力のあるスイムで、上位で通過し、ライバルでもあるSteffenに、バイクで付いて行くことができれば、今年のOceansideにて、ランラップも取る程の成果が出ている走りで、世界女王へ道も夢ではない。

Leanda Caveーリアンダ・ケイブ(イギリス)

2012年シーズンは、最強とも言える、IronmanIronman 70.3のダブル世界タイトルを、プロ女子で初めて達成したことで、その素晴らしいパフォーマンス力を示したCaveも、もちろんこのフィールドへ戻り、タイトル防衛を目指す。去年のシーズンは、出場したどのレースでも、優勝を重ねており、そのバランスの良いパフォーマンス力で、世界王者としての道を、順調に進んで行った。だが、その後に、皮膚がんを煩い、治療は大事に至らない程に回復したものの、今年のシーズンは、うまく波に乗れずに、上位入賞を逃すレース内容が多かった。実際、今年2月頃からの左ふくらはぎの怪我を放っておいた結果、足首とモモにも怪我の影響が出てしまい、リカバリーの日々が続く中で、今年のIroman 70.3世界選手権でも、得意のスイムでは、うまく上位通過に繋げたが、やはりバイクでペースを掴めずに、結局13位という結果で終わってしまった。その不調さを克服し、この最終目標であるIM世界選手権に合わせて、名コーチであるSiri Lindley(シリ・リンドリー)と共に、通称Super Birdと呼ばれる程の、鳥のような高速なコンディション作りで、去年以上のパフォーマンスを、どれくらい見せられるのかが注目だ。

Mirinda Carfraeーミリンダ・カーフレイ(オーストラリア)

2010年IM世界王者になってからは、毎年このハワイのレースでは、優勝を逃してきたCarfraeが、今年こそは優勝を確実に取りに来るだろう。去年は、スイムで遅れた影響から、トップ3人の選手と10分以上の差がついたが、その3人が4分のペナルティーを取られたおかげで、ランで再度勝負をかけることができた。だが、バイクの際、エネルギーボトルを落としたことが、ラン後半に大きく響き、勢いのあるストライドで、現世界王者Caveに追いつくも、抜かし切ることができないままスピードを落とし、3位でレースを終えた。その後、シーズンが始まってからも、トップ3に入るのも難しい様なレースが続き、優勝をうまく手にすることができずにいた。そこで、2010年に世界王者へと導いたコーチであるTeam SiriusSiri Lindleyの元に戻り、再度トレーニングを見直すことに専念している。その過程で、今年のIronman 70.3世界選手権に出場はせずに、その同じ週に開催されたIronman 70.3 Muskokaで、1時間18分代のランスピードを取り戻し、今年初の優勝を果たし、ハワイに向けた調子の良さを徐々に上げてきている。問題のスイムとバイクでうまく先頭との距離を離さずに、去年同様に、ランスタートまで5分以内の差をキープできれば、そのままこのフィールド最強のランナーアップを見せてくれれば、世界王者としての再度返り咲くだろう。

Sonja Tajsichーソニア・テシック(ドイツ)

去年のIM世界選手権にて、驚きのランナーアップで、唯一の2時間59分代で走りきり、4位に入賞した。その際、レース後のインタビューでは、たいした熱さは感じずに走れた結果が上位入賞に繋がったという発言が、上位4選手に驚きを与えた場面もあることから、このハワイの灼熱な天候に、相当な適応力がある。ランラップを取ったことから、ランが一番速いと思われている様だが、この選手が最も得意としているのは、バイクであり、ドイツ代表としてジャーマンスタイルなハイスピードな追い上げが見物だ。今回は、苦手なスイムのタイム次第によっては、バイクで凄まじい追い上げをし、そのまま去年の様なランを見せてくれれば、優勝に近い存在となるだろう。

Meredith Kesslerーメレディス・ケスラー(アメリカ)

今年初レースであったIronman New Zealandの優勝から、その勢いは落とさずに、強豪が集まったIronman 70.3 St. Georgeの米国地区選手権では、アメリカ地区王者に輝き、その後も70.3レースで、更に2勝も掲げている。去年のシーズンから、バイククラッシュに悩まされるレース展開が多く、世界選手権でも、バイク中盤までは、トップ5の位置にいたものの、落車に見舞われた後、レースを続けたものの、ランでリタイアする結果になってしまった。そして、今年もIronman 70.3 Vinemanにて、バイククラッシュに見舞われ、リタイヤを余儀なくされたが、その1ヶ月後、急速なリカバリー能力で、70.3レース2連勝し、その潜在的なパフォーマンス能力を持っている。常に上位で上がれる得意のスイムから、うまくトップ集団と一緒に、バイクスタートすることができれば、今年こそは、バイクでスムーズなレース展開で、最後のランで走れる脚を持っているので、最後まで見逃せない選手だ。

Linsey Corbinーリンジー・コービン(アメリカ)

現在アメリカ代表選手で、最もパフォーマンス力を上げてきており、去年は、IM世界8位に入賞したことを証明するかの様に、その後は、Ironman ArizonaIronman 70.3 Mont-Tremblantでの優勝を重ねてきた。今年は、脚の怪我にも悩まされる中のシーズンを送っていたが、うまくリカバリーを重ねてきているので、Ironman Arizonaの様なスーパーパフォーマンスを見せることが出来れば、苦手なスイムをカバーできる程のバイクとランの力があるので、確実に、今年の世界選手権でも上位争いに食い込んでくるだろう。

Gina Crawfordージナ・クロウフォード(ニュージーランド)

ニュージーランド代表の女王として、11度のIronman優勝を片手に、今年のシーズンも、子育てもしつつ、地元開催のChallenge Wanakaで余裕の優勝を飾り、Ironman 70.3レースでは、オーストラリア国内YeppoonSunshinecoastで、優勝を重ね、順調にシーズンを過ごし、そのハイパフォーマンス力を証明している。3種目共バランスの良いレース展開で、優勝まで突き進むものの、ラン終盤に少し落ち目がある部分を、しっかり修正してくることができれば、今年の世界選手権でも上位入賞は確実だ。

Heather Wurteleーヘザー・ワーテリ(カナダ)

年々その存在を知らし始め、確実に力をつけてきている、唯一のカナダ代表選手である、180cmを超える身長を持つWurteleに注目だ。2011年までは、あのタフなコースと言われてきたIronman St. Georgeにて2連覇を果たし、その年のIM世界選手権では、8位に入賞する実績がある。去年のハワイでは、パフォーマンスが振るわず、14位に終わってしまったものの、今年は更にレベルアップした姿を見せ、Ironman Coeur d’Aleneでの優勝に加え、70.3レースであるPanamaCalgary、そしてRevolution3 Quassyにて3勝する等、順調にシーズンを迎えてきた。3種目共バランスのいいレース展開で、最も得意なバイクの勢いから、かなり成長したランスピードで勝てる力を持っているので、どの位置でバイクフィニッシュできるかが、上位入賞に限らず、優勝に近づくための大きな要因となるだろう。

Natasha Badmannーナターシャ・バドマン(スイス)

2012IMWCBadmannBike

やはりこのフィールドで、一番注意しなくてはならない選手として、現在46歳で現役の6度IM世界王者であるBadmannのレース展開に注目だ。ここ数年間は、優勝候補として重要視されなくなってきていた矢先に、去年の世界選手権では、得意のバイクの追い上げから、ランでも素晴らしいパフォーマンスを見せ、そのまま6位でレースを終えたことが、大きな衝撃を与えた。過去にも、最強と言えるバイクスピードは衰えることなく、特に、スイムのタイムが異常に速くなっている傾向にあり、現在も成長中である。今年のIronman Melbourneでは、強豪が集まる中で、4位に入賞し、それ以降はレースへの出場は避け、この世界選手権を的にしたトレーニングを重ねていた。今年もスイムのタイム次第で、バイクでのトップ争いから、他のプロ女子に刺激を与えると共に、ランでもステディーなペースで走ることができれば、トップ5入りもできるだろう。

Yvonne Van Vlerkenーヨネ・バンブラーケン(オランダ)

元デュアスロンチャンピオンとしてデビューした後、2007年からトライアスロン界へ転向した後、素晴らしいパフォーマンス力を証明しつつ、2008年には、Challenge Rothにて、14年破られていなかった7xIM世界王者のPaula Newby Fraser(ポーラ・ニュービー・フレイザー)の記録を更新した。その年2008年の世界選手権では、優勝候補とされていたが、4xIM世界王者Chrissie Wellington(クッリしー・ウェリングトン)に続く、2位でフィニッシュし、そのポテンシャルを示し始めていた。それからも、数々のIronmanレースで優勝を重ねていたものの、2010年の7位以降は、この世界選手権で、うまくその調子の良さを見せられずにいた。今年は、強豪が集うIronman Melbourneを皮切りに、2位で入賞し、その強さを再度証明し始め、Challenge Rothでも2位入賞で、未だにサブ9で走れる実力を兼ね備えている。やはり、デュアスロン出身ということで、スイムに苦手意識が高いが、今年からTeam SiriusのコーチSiri Lindleyの元でトレーニングを重ね、今まで以上のスピードアップに力を注いでいる。うまくスイムで距離を離されることがなければ、得意のバイクとスイムで、トップ集団で争える実力のある選手なので期待がかかる。

Mary Beth Ellisーメリー・ベス・エリス(アメリカ)

先月のハワイに向けてのトレーニング中に、鎖骨を骨折する等の重傷を伴うバイククラッシュで、世界選手権出場が危ぶまれた。だが、医師の診断で、出場することは100%不可能ではないという助言とともに、素晴らしいチャレンジ精神でレース完走を目指す。去年の世界選手権では、3位に入賞した後も、特に今年は、最強とも言える程のパフォーマンスで、Ironman CozmelFranceMont-Tremblantで3連勝し、その他出場したレースすべてで、完全優勝をしている。もし、バイク事故がなければ、本当の優勝候補として、大きな的となっていたものの、このハワイに向けて頑張ってきたエイジグループ選手の横目に走り、時間がかかっても完走することに、世界選手権出場の意義があるという姿勢を見せてくれた、そのアスリート根性に注目だ。

他注目選手:今回は、常に男子と変わらないスイムラップで高速スイムを見せるイギリス代表Jodie Swallow(ジョディー・スワロー)や、アメリカ代表の元NCAAカレッジスイマーであるHaley Chura(ヘイレイ・チュラ)、そして毎年世界選手権にて、スイムトップ通過をするアメリカ代表Amanda Stevens(アマンダ・スティーブンス)の3人が、スイムから争う展開で、繰り広げられると思われる。

3人の子供を持つママさんプロトライアスリートとして注目のアメリカ代表Jessie Donavan(ジェシー・ドナバン)も、スイムが苦手ながらも、得意のバイクで、Ironman South Africaでは、4時間50分代で走り切る実力があり、その後のランでも、トップ10に食い込む速さを持つ実力のある選手だ。

そして、長年参戦していたITUやショートノンドラフティングのフィールドから離れ、ロングへ転向した、イギリス代表Liz Blatchford(リズ・ブラッチフォード)の世界選手権デビューに注目。初ロングであったIronman Cairnsでの初優勝後に、どれだけパワーアップしてきているかが、大きな視線が浴びせられる。

プロ男子

Pete Jacobsーピート・ジェイコブス(オーストラリア)

これまでは、過去3年間に、2010年9位、2011年2位で入賞した後、ようやく去年は、念願の世界王者に輝いた通称PJが、今年もディフェンディング王者として、世界のタイトルを守るために帰ってくる。去年の勝因は、定評のある高速スイムから、トップ集団で上がり、今まで以上に強化されたバイクスピードの勢いで、ハワイ歴代3位のランラップ2時間41分を弾き出したランスピードを活かし、そのまま優勝へと突き進んだ。今年のシーズン初めは、再度怪我に悩まされ、Ironman 70.3 Hawaiiで8位、70.3 Cairnsで4位入賞等、いまいちな結果が多かった。怪我のリカバリーが途中のままで、世界選手権の出場権を得るために、Ironman Frankfurtに出場したが、最後のマラソンで歩いてフィニッシュする程の悪いコンディションでいた。だが、この怪我を負ってしまうシナリオは、過去3年間も同じストーリーであり、常に世界選手権の数ヶ月前に怪我をすることは、ジンクスである。その悪影響の中でも、しっかりと標準を、この世界選手権のために合わせ、最高のコンディション作りをできる適応力と経験があることは間違いないので、今年もバイクフィニッシュの順位しだいでは、サブ2時間40分のランで、トップまで上がり、優勝まで突き進むこともできるだろう。

Sebastian Kienleーセバスチャン・キーンリ(ドイツ)

いまではもう、その名が世に知らされ過ぎている程の、異次元のバイクスピードで有名になり、今年のIronman 70.3世界王者でも、2連覇を達成した。とにかく、苦手のスイムからの追い上げを見せる、バイクスピードは、どのプロ選手でも太刀打ちができずに、そのままリードを取り、ランで逃げ切るスタイルで、自身の持つ勝利法を確立した。今までいた元プロ選手のドイツ代表元世界王者であるNorman Stadler(ノルマン・スタドラー)を彷彿させる様な選手だが、Kienleの場合、ランが苦手であったStadlerに比べて、あの凄まじいバイクスピードの後に、ハーフでは1時間13分代で走ることができ、しっかりとしたハイペースで走れるランが、大きな強みである。去年の世界選手権では、バイク後半に、トップを先導していたMarino Vanhoenacker(マリノ・バンホナッカー)と共に、大幅な差を開いていたものの、途中パンクに悩まされ大幅なタイムロスをしたことでチャンスを逃した。後続の2位との差を10分以上開いていたVanhoenackerとバイクを一緒に上がっていれば、そのままステディーなランで優勝することも可能だった。今年のシーズン始めは、やはり怪我に悩まされており、順調なスタートをしていなかったが、先月のIM70.3世界選手権2連覇を達成した。高速バイクスピードを取り戻し、苦手のスイムも少しながらも成長しているので、今年こそは、得意のバイクで、5分以上の差をつければ、そのまま逃げ切り優勝するに間違いないだろう。

Andreas Raelertーアンドレアズ・ラエラート(ドイツ)

この世界選手権へ初出場を決めてから、過去4年間とも、すべてトップ3でフィニッシュしている強者であり、2000年のシドニーオリンピック代表としても、ITU界で認められたスピードを活かしたレース展開で、常にラン勝負に賭けている。去年は、先頭を行っていたJacobsとのバイクフィニッシュの少しの遅れが、大きく響いたことで、ランでは先頭へ追いつけなかったものの、最後の2キロ残す所で、意地で2位を守り入賞を果たした。今年のシーズンは、歯科手術の影響で、目立ったパフォーマンスを見せずにいたものの、Ironman Austriaで、その実力を再度発揮し始め優勝を果たした。だが、いまだに絶好調とは言えないコンディションのままでおり、先月開催されたIronman 70.3 Muskokaでは、優勝候補として期待されたものの、トップと4分差をつけられ2位で終えてしまったことが、大きく問題視されている。常に、この世界選手権を最終目標としている選手なので、いつも通りに3種目共バランスの良いレース展開から、得意のランで、マラソンの前半戦でトップに追いつくことが可能ならば、その後半戦の勝利法は、2010年のChris McCormackと最後の数キロで、並走し粘ったが、負けてしまった経験から得ているので、有利な展開で初の世界王者に輝くだろう。

Eneko Llanosーエネコ・ヤノス(スペイン)

今年最も著しく成長を遂げた選手であり、3大Ironman地区選手権の内、MelbourneFrankfurtで、2賞重ねたことから、今年こそはこのハワイでの優勝に大きな期待がかかっている。過去の世界選手権での結果は、うまくいくような物ではなく、2008年の2位入賞から、リタイアやトップ10外でのフィニッシュが続き、うまくこのレースコンディションに、はまりきっていない印象が残っていた。しかし、今年の大きな成長を手助けした要因として、今年から新しいコーチに6xIM世界王者Dave Scott(デイブ・スコット)を招き入れ、その成果が地区選手権等の大きな大会での優勝に、繋がっている。その2つのレース後は、じっくりとこの世界選手権のために、時間を費やし、初世界王者を目指して、練習を重ねているので、得意としているバイクとランで、どこまでトップ集団と争えるかが、優勝を分ける鍵になっていくに違いない。

Craig Alexanderークレッグ・アレキサンダー(オーストラリア)

いわずと知れた3xIM世界王者であり、現IM世界選手権のコースレーコードホルダーで、今年で40歳を迎え、引退の字も見せない様な、素晴らしいパフォーマンスを、過去に証明し続けてきた。去年は、再度優勝候補として、2連覇を期待されたものの、レース2週間前のウェイトトレーニング中に、腰を痛めてしまったことを隠しつつも、その怪我が、バイクで大きく響き、ランをスタートした頃には、トップ集団へ、追いつくこともできずに、12位で終わってしまった。今年のシーズンは、Ironman Melbourneにて、再度その世界王者としてのパフォーマンスを証明する機会だったが、結局得意のラン勝負で、ペースが落ちてしまい3位でフィニッシュしたことが大きな疑問となっている。その後は、70.3レースを、連戦するシーズンを送るレーススケジュールを実行し、それがうまくはまり、Ironman 70.3 KansasHawaiiLake Stevensで3連勝した。そして、期待されたIronman 70.3世界選手権では、バイクでのドラフティングペナルティーを受けたことで、ランでの勝負をかけられることができずに、20位という苦い結果で終えた。70.3世界選手権が大きなパフォーマンスレベルを測る大きな基点だったが、2011年世界王者になった時の様なバイクパフォーマンスを見せてくれれば、2時間40分を切れるランを走れるので、4度目の優勝も可能だ。

Fredrik Van Lierdeーフレドリック・バンリエルデ(ベルギー)

世界のIronmanレースでも、一番ハードだと言われるIronman Niceで連覇を果たし、シーズン初めのトッププロが集まったAbu Dhabi Triathlonでは、優勝を飾り、その素晴らしいパフォーマンスを維持している。去年の世界選手権では、最後の数キロでRaelertに抜かされ、3位で終わってしまったものの、トップ争いに絡める実力は、正真正銘である。元IM世界王者で兄のLuc Van Lierdeの様に、3種目とも穴がなく、常にトップ争いを繰り広げられる選手なので、順調にトレーニングを重ねていれば、今年こそは、優勝圏内に入るパフォーマンスを見せてくれるに違いない。

Dirk Bockelーダーク・ボッケル(ルクセンブルグ)

北京五輪代表選手でもある実績を持つ選手であり、ロングへの世界へ転向後も、2009年から毎年出場を重ねている、この世界選手権では、すべてトップ10入りをしている。去年は、レース前のバイクライド中に、車の窓からボトルを取ろうとした時に、指がひっかかり、手を骨折してしまったが、レースにはギブスをして参戦し、その痛みに耐えながらも、レース内容は、悪い物ではなく、ギリギリトップ10入りを果たし、素晴らしい精神力を見せてくれた。今年は、ヨーロッパでも強豪が集まるChallenge Rothで優勝をし、その調子の良さを見せていたものの、世界選手権へ向けての練習中に、怪我を追ってしまったことから、出場予定だったIronman 70.3 Luxembourgを見送ってしまった。この怪我がどこまでトレーニングに影響が出ているかが問題視されるが、順調にリカバリーをし、体調を整えてきているのならば、確実に優勝争いに食い入るパフォーマンスも見せてくれるだろう。

Andy Pottsーアンディー・ポッツ(アメリカ)

どのレースでもスイムトップで上がる実力があり、あのMichael Phelps(マイケル・フェルプス)も通うアメリカ・ミシガン大学出身のスーパースイマーであるPottsの更なる成長にも注目が浴びせられる。ITUサーキットでは、アメリカ代表としてのオリンピック出場を果たす等、そのスピード力を証明し、ロングへ転向後も、得意の分野とされる70.3レースで、多くの優勝を重ねてきた。去年の世界選手権では、スイムで差をつけたものの、すぐさまバイクで抜かされてしまい、未だにバイクでの弱さが残るものの、2時間50分代で走れるランで、トップ10まで上り詰める様なパフォーマンスが彼のスタンダードだった。だが、今年こそは、弱いバイクを再度見直し強化しており、70.3世界選手権でもトップ集団でバイクを終え、4位に入賞する実力のある選手なので、最後まで見逃せない展開をしてくれるだろう。

Bevan Dochertyービーバン・ドカティー(ニュージーランド)

唯一ニュージーランド代表の有力候補であり、去年までは、ITUのフィールドでスピードプレイの中で、オリンピックを含むトップ争いのレースをしてきた経験を活かし、IM70.3世界3位に入賞する等、その存在をロングの世界にも表し始めた。今年は、シーズン初めに、自国のIronman New Zealandにて、大幅な差をつけて、初ロングで初優勝し、再度驚きのパフォーマンス力を見せた。それからは、アメリカ国内をベースとし、70.3レースで優勝を重ね、先月のIM70.3世界選手権へ標準を合わせていたが、思う様なパフォーマンスができずに、リタイアへと追い込まれてしまった。実際、優勝しているどのレースも雨や涼しい環境の中行われているレースが多い中で、この灼熱のハワイで、どれだけ耐えられるのかが左右する可能性もあるが、世界選手権出場する上では、彼なりのパフォーマンスを、最大限に発揮するレースを見せてくれるだろう。

Jordan Rappージョーダン・ラップ(アメリカ)

3年前の生死を分けるような大事故から復活し、その回復後、すぐに参戦したIronman Arizonaで4位入賞した際に、とても感動的なフィニッシュで、大きな印象が残り、いまでもアメリカンヒーローとしての名が高い、通称Rappstar(ラプスター)の2度目の世界選手権挑戦に注目だ。去年は、Ironman Texasで優勝した後も、Ironman New York Cityで、 アメリカ地区王者に輝き、ハワイの世界選手権へ権利を得た。世界選手権のレースでは、スイムでの遅れが大きく響き、得意のバイクで追いかけるものの、トップ集団との争いに絡めずにいたが、ランで粘り強さを見せ、初挑戦で13位に入賞した。今年は、Ironman Melbourneに出場し、4位に入賞した後は、70.3レースへ出場を続けたものの、いまいちな結果でシーズンを過ごしていた。今回の世界選手権では、順調にコンディションを合わせていければ、トップ10に余裕で入れる実力のある選手なので、彼のレース展開にも注目だ。

Timothy O’Donnellーティモシー・オドネル(アメリカ)

トライアスリート唯一の海軍学校出身であり、これからのアメリカ代表のホープとして期待される選手だ。2012年には、Ironman 70.3 Texasにて北アメリカ王者にも輝いた後、世界選手権では、8位に入賞する経歴を重ね、今年のレース展開が気になる要注意人物だ。今年は、Ironman Brazilにて、人生初のIronmanレース優勝を飾り、その今年のパフォーマンスアップを証明してくれた。だが、1ヶ月前に開催されたIM70.3世界選手権では、スイムからバイクまでは、順調にトップ集団を引いていたものの、得意のランで調子が振るわずに、8位で入賞したことが、大きな疑問となるが、このハワイ世界選手権までに、しっかり調整してきていれば、再度トップ10入りする実力のある選手なので期待したい。

James Cunnamaージェームス・カナマ(南アフリカ)

Team TBB所属の最有力選手でもある、このCunnamaが、今回世界選手権への初出場を果たす。去年も世界選手権への出場権を得ていたものの、その時期では優勝することが、まだ不可能だということから、出場を辞退する等、優勝を完全目標とする完璧なレースを望んでいることがわかる。だが、実際30歳の若さで、2010年Ironman Florida優勝経験もあり、去年のChallenge Rothでは、ラン勝負で勝ち取り、8時間を切るパフォーマンスを見せてくれた。今年のシーズン前半は、優勝を逃す様なレース結果が多かったが、2週間前のIronman 70.3 Cozmelでは、強豪が集まる中で、優勝を飾り、苦手としているスイムでも成長が見られ、トップ集団に、追いつく自信のあるバイクと最も得意なランが、うまく作用すれば、今年のハワイでは、優勝も狙える様なパフォーマンスを見せてくれるので、その動向に注目だ。

その他注目選手:今年のIronman Cairnsにて、驚きのバイクラップ4時間20分代で逃げ切り、久しぶりの優勝を果たしたオーストラリア代表Luke McKenzie(ルーク・マッケンジー)が、去年同様にスイム上位で上がり、苦手のランを埋めるためにも、その高速バイクで先頭を引き、トップ10入りを目指すだろう。同じくオーストラリア代表ベテランLuke Bell(ルーク・ベル)も、今年は、Ironman Mont-Tremblantにて、アメリカ地区王者のタイトルを得て、その勢いで、今回の世界選手権では、2003年の自己最高5位を上回るパフォーマンスを見せてもらいたい。

今年のスーパールーキーとしては、2人程レースに刺激を与えてくれる選手がいる。まずは、去年のIronman Floridaで、IMバイクコースレコードの4時間4分を弾き出した、アメリカ代表Andrew Starykowitz(アンドリュー・スタリコウィッズ)のハワイ初挑戦に、大きな期待がかかり、元水球選手だったので、スイムから先頭を泳ぎ、そのまま高速ペースで、バイクフィニッシュまで、後続とどれだけの差をつけ、ランでどこまで逃げ切れるかが大注目だ。もう1人は、オーストラリア代表Clayton Fettel(クレイトン・フェテル)の初参戦で、トップスイマーとして、ライバルのPottsとの駆け引きに注目され、未だに成長中のバイクとランで、どこまで勝負を見せられるかが見所だ。

ヨーロッパ贅からは、2005年IM世界王者であるドイツ代表Faris Al-Sultan(ファリス・アルサルタン)に注目であり、去年の世界選手権でも5位に入賞し、いまだにベテランとしての実力を持っているので、今回の動きにも注意して見ておきたい。同じくドイツ代表であるランナーアップで過去何度もトップ10入りを果たしているTimo Bracht(ティモ・ブラット)も、バイクでのフィニッシュ順位によっては、今年もいい位置でレース展開を見せてくれるだろう。そして、Ironman Switzlandにて、7連覇を果たしているスイス代表Ronnie Schildknecht(ルーニー・シュルドネット)も、必ずトップ争いに加わる実力のある選手なので要注意したい。

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