第2回目を迎える2013 Ironman Melbourneアジアパシフィック地区選手権が、すでに大人気大会として、5分でエントリーがソールドアウトするという快挙を得て、今年もその人気地区選手権大会としてのレースエクスペリエンスをそのまま残し、大々的に開催された。去年は、一回目大会に関わらず、その人気とレース環境や設定等が、とても好評を得ていた中、レース当日は、前日に吹き荒れた風等で大きな不安を読んだが、予定通りレースが開催され大成功に終わった。
だが、今年のレースは、去年に似た形の天候の中で、特に強風の面で、大きく影響された。レース前日に吹き荒れた風によって、高波が予想され、スイムスタート場所の変更と2ラップスイムに一時変更された。ところが、レース当日になると、その高波が思ったよりも荒れており、急遽スイムが半分の距離の1.9キロに変更され、かなりチャレンジングな状況の中レースがスタートした。
それはスイムでの高波だけではなく、バイクでもその風の影響は大きく響き、どのアスリート達にとっても、かなり過酷な状況下の中のレースになっていた。トッププロの選手でも、最初の45キロのバイク折り返しまで、向かい風で1時間20分程かかっており、後半の45キロは、55分という追い風のスピードを活かした、とてもペース配分が難しいバイクレース内容だった。最終的に、このタフなコンディションでのスイムとバイク、そして最後のランで誰が残り、走り切るかが優勝の分かれ目になるレースになっていった。
プロ男子
高波に負けないように、砂浜を駆け走る様に、飛び込みスイムスタートし、まずスイマーのオーストラリア代表Clayton Fettel(クレイトン・フェテル)が飛び出すだろうと予想された通りの展開で始まった。同じくスイムパートナーであるオーストラリア代表Joseph Lampe(ジョセフ・ランピ)と二人で先頭を引き始め、その数メートル後ろのパックには、前年度王者オーストラリア代表Craig Alexander(クレッグ・アレキサンダー)、スペイン代表Eneko Llanos(エネコ・ヤノス)、オーストラリア代表Luke Bell(ルーク・ベル)を含む選手達がハイペースで泳いでいた。最初にスイムフィニッシュを飾ったのは、やはりFettelとLampeが、19分32秒でトップ通過し、その1分後にAlexander、Bell、Llanosが、先頭と近い差でトランジションへ向かった。そして、優勝候補のベルギー代表Marino Vanhoenackerは、先頭から2分遅れてスイムをフィニッシュし、強力なバイクパワーで追い上げることを目指してバイクスタートした。
去年の様に、スイムで大幅な差を得ることができなかったFettelは、スイムが半分になったことで、彼にとって不利な展開になり始めたが、最初の数キロで1分30秒の差をつけて走り始めた。だが、優勝候補であるAlexander、Llanos、Bellが含むパックがすぐさまに前の2人を吸収し、大きく連なった集団でレースが進んで行く。2分遅れでスイムをフィニッシュしたVanhoenackerは、去年のIM世界選手権と同じ戦略で、得意のバイクで、すぐさま先頭に追いつき、他のバイクの強いバミューダ代表Tyler Buterfield(タイラー・バターフィールド)やオーストラリア代表新鋭Tim Reed(ティム・リード)を引き連れバイクの大きな集団を形成していた。そのままVanhoenackerが強風の中でもバイクの力を見せつける様に、徐々に大幅な差を開き始めて行き、集団にいたBellやLampeのリタイアが続く中、かなり良いペースでAlexanderやLlanosも差を広げられない様に二人でペースを上げて行った。
最初にトランジションに帰って来たVanhoenackerが、4時間22分でフィニッシュし、去年ハワイ世界選手権でリタイアしてしまった問題のランで、どれだけ逃げられるかが優勝の鍵になっていった。その5分後に、Alexander、Llanos、Fettelを含むパックがバイクフィニッシュし、ランを得意とするAlexanderとLlanosの追い上げに期待がかかる。そして、アメリカ代表Jordan Rapp(ジョーダン・ラップ)もバイクで差を縮める共に、ランで追い上げる準備を整えて始めていた。
バイクで力を尽きたFettelは、徐々にランで順位を落とす中で、ベテランのオーストラリア代表Chris Legh(クリス・リー)が、今年の好調さを見せ追い上げを見せ順位を上げ始める。そして、スロースイムからのバイクの追い上げで、良い位置でランスタートしたRappがハイスピードなランを見せていた。最初の10キロをAlexanderとLlanosが並走していたが、Llanosが飛び出し始めAlexanderとの差を徐々に開き始める。いまいち得意のランで調子が振るわないAlexanderは、脚の痛みに耐えながらもマイペースで3位を維持するパフォーマンスを続け、逆に調子が良いLlanosが、トップを走るVanhoenackerとの差を徐々に詰めて行き、約35キロ地点でようやく追いつき、そのまま抜き去って行く。
そのままこのタフなバイクコースの後にベストランラップ2時間43分で素晴らしい追い上げを見せたスペイン代表Eneko Llanosが、2013 Ironman Melbourneアジアパシフィック地区王者としてのタイトルを勝ち取った。2位には、バイクで飛ばしすぎたのがランで響いてしまい優勝をギリギリで逃してしまった、ベルギー代表Marino Vanhoenackerがフィニッシュし、前年度優勝者のオーストラリア代表Craig Alexanderが、予想に反した得意のランでの失速が大きく響いたことで3位に入賞で終えた。そして、アメリカ代表期待の星であるJordan Rappがランナーアップとしてスイムの遅れを取り戻し4位に入賞し、5位には伝説のベテランであるオーストラリア代表Chris Leghが見事な復活劇をとげトップ5入りを果たした。
リザルト
1.Eneko Llanos(スペイン)
00:20:30 | 04:28:50 | 02:43:35 | 07:36:08 |
2.Marino Vanhoenacker(ベルギー)
00:21:45 | 04:22:32 | 02:51:28 | 07:38:59 |
3.Craig Alexander(オーストラリア)
00:20:33 | 04:29:03 | 02:46:44 | 07:39:37 |
4.Jordan Rapp(アメリカ)
00:23:49 | 04:30:52 | 02:52:34 | 07:50:54 |
5.Chris Legh(オーストラリア)
00:21:36 | 04:36:04 | 02:51:44 | 07:52:29 |
プロ女子
予想通りの展開で、スイマーであるアメリカ代表Amanda Stevensが先頭を行く中で、同じくアメリカ代表のMeredith Kesslerがスイムで大きな差をつけたい所だったが、距離が半分になったことで、この二人にも不利な展開が襲いかかる。最初に21分50秒代で、StevensとKesslerがトップ通過し、1分30秒後に、オーストラリア代表Lisa Marangon(リサ・マラゴン)やカナダ代表Tenille Hoogland(テニール ・フーグランド)がフィニッシュし、その3分以上後に、優勝候補であるスイス代表Caroline Steffen(キャロライン・シュテファン)、オランダ代表Yvonne Van Vlerken(ボニー・バンブラーケン)、6度IM世界王者スイス代表Natascha Badmann(ナターシャ・バドマン)、そしてエイジ上がりの新人であり期待のイギリス代表Corinne Abraham(コリン・エイブラハム)が続々と続いた。
バイクがスタートすると、まずKesslerが先頭を引き始める中、スイムで遅れをとったSteffenとVan Vlerken、Badmannが追い上げをみせる。その中で、Badmannがリードを引きペースを整え始め、それを追う様にSteffenとKesselerが、同じパックでレースを進めて行く。だが、その後ろから、高速ペースで抜き去り、Abrahamが飛び出し始め、他の優勝候補の選手達を置いて行き、そのままバイクで差を付け始めた。バイクが終わる頃には、あのバイクを得意とするBadmannに5分もの差を付け、Abrahamが異常なスピードでバイクフィニッシュまで向かった。
トランジションにAbrahamがバイクベストラップ4時間42分という驚異的なバイクタイムで、5分差を付けランへスタートし、2位で通過したのは、IM界のベテランBadmannがフィニッシュし、先頭から10分以上遅れて、SteffenやVan Vlerken、Kesslerが帰ってきた。
ランに入るとこのエイジ上がりの新人であるAbrahamがどこまで走れるのかが注目され、後ろから追うベテラン勢がいつ追いつけるかが優勝の別れ目になってきた。だが、Abrahamのペースは落ちる所か、快調すぎるくらいのハイペースなランで、気づけば3時間を余裕で切るランタイムで進んでいた。唯一追いかけをはかるのが、ニュージーランド代表Gina Crawford(ジナ・クロウフォード)が、トップ5入りを目指して得意のランで追い上げ始め、Van Vlerkenも一緒にバイクをフィニッシュしたSteffenやKesslerよりも速いペースで、先頭との差を付けられるか頑張っていた。
最終的に、素晴らしい高速ペースでバイクとラン共に最速ラップを弾き出し、この強豪の揃う2013 Ironman Melbourneアジアパシフィック地区選手権にて、イギリス代表Corinne Abrahamが、余裕のフィニッシュタイムで、Ironman大会にて初優勝を飾り、その姿は次世代のChrissie Wellingtonを映し出す様なパフォーマンスを見せ、驚きのデビューになった。16分ほど遅れて、元デュアスロン王者としてのランの強さでオランダ代表Yvonne Van Vlerkenが2位でフィニッシュし、前年度王者のスイス代表Caroline Steffenが悔しくも3位に入賞した。4位には、46歳のベテランであるスイス代表Natascha Badmannが再度素晴らしいトップ5入りを見せ、5位には、3週間前のIMニュージーランドで2位になったニュージーランド代表Gina Crawfordが入賞した。
リザルト
1.Corinne Abraham(イギリス)
00:28:23 | 04:42:09 | 02:56:50 | 08:10:56 |
2.Yvonne Van Vlerken(オランダ)
00:27:09 | 04:55:01 | 03:00:46 | 08:26:40 |
3.Caroline Steffen(スイス)
00:24:34 | 04:53:17 | 03:09:23 | 08:31:22 |
4.Natascha Badmann(スイス)
00:26:50 | 04:46:58 | 03:16:33 | 08:34:37 |
5.Gina Crawford(ニュージーランド)
00:25:15 | 05:02:03 | 03:05:56 | 08:37:23 |
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