2012年Ironman 70.3世界選手権が、ネバダ州ラスベガス近郊のHendersonで、この場所に移され2回目として大規模に開催された。今年は、熱さがどの選手にも厳しいコンディションとして、タフなパフォーマンスが必要となるレースになり、今まで以上に多くに強豪アスリートや過去の70.3世界王者が、このラスベガスへ集結し、予想も付かない様な展開が繰り広げられ、今までで一番争いの激しい大会へと成長した。
プロ男子
朝6時30分に、スイムがスタートし、トップスイマー達は、最初から引き離そうと、100メートルを1分ペースで飛び出し始める。最初のブイ500メートルまでは、つらなった大きなパックが続き、後半にスイムが強いAndy Potts、Clayton Fettel、Josh Ambergerの誰かが飛び出し、引き離すだろうと思われた。しかし、1500メートル通過した所でも、渋とく後ろのパックが、うまくドラフティングを使い、縦に長いパックで付いて行ってたのが見え、最後200メートル残す所で、常にスイムトップで上がることを目指しているアメリカ代表Andy Pottsとオーストラリア代表Josh AmbergerとClayton Fettelのサーファースイマー達の中で入れ替わり、Ambergerが、23分16秒で1位通過し、その後1分間に、続々と強豪選手がトランジションへ向かった。
ITUのショート上がりで、素早いトランジションが得意なAndy Potts、Clayton Fettel、Michael Raelert等が、バイクをスタートし始め、最初から力強く踏み始めた。バイクを得意としているFettelがトップを引くと思われたが、調子のいい所を見せようとRaelertが、先頭を引き始め、後方の選手を離し、1人旅を始め出した。トップで出発したFettelは、バイク開始15分程で、パンクしてしまい、そのままリタイアを余儀なくされた。
このコースでRaelertの一人逃げは、うまく行かず、すぐに前年度世界王者のオーストラリア代表Craig Alexander、アメリカ地区王者アメリカ代表Tim O’Donnell、パワーサイクリストのオーストラリア代表Paul Mathews、いままでで一番調子が良くと最高のコンディションだと豪語していたアメリカ代表Andy Pottsが、苦手なバイクで、先頭を引く様にパックをなしていた。
途中、先頭の入れ替わりながら、しっかりとしたドラフティングゾーンの距離を保ち回し続け、スピードを上げようと頑張っていたが、後方の選手のGreg Bennett、Bevan Docherty、Josh Amberger等が、このパックの後ろに付き、大きい列をなして巡行する展開になった。だが、この大きな集団とアップダウンの激しいコースのため、元2度70.3世界王者のMichael Raelertがドラフティングペナルティーを取られ、すぐに4分間も時間をロスする結果になってしまった。
30マイルを超えた所で、スイムで3分程遅れて上がってきたドイツ代表Sebastian Kienleが、事実上最速サイクリストとしての力を見せ、その3分の差を詰め、先頭を行く大きなパックをごぼう抜きして、一人逃げ始めた。驚くようなスピードで抜かし、そのまま1分程差を開き、さらに差を開こうと、上りや下りを使い、ペダルを力強く踏み続けた。
最初に、トランジションに上がってきたのは、やはりKienleで、バイクラップ最速の2時間7分54秒という驚異的なタイムで、2位のバイクラップタイムと6分もの違いを見せ、そのバイクパートでの力を見せ始めた。そして、素早いトランジションをし、最初からランを力強く走り始めた。その3分後、続々と大きな集団がトランジションに戻り、Kienleを追いかけるように、Alexander、Potts、Amberger、O’Donnellが、パックで走り出した。そして、それを追う様に、ロンドンオリンピアンDochertyとHy-Vee元チャンプのBennettが追いかけ始める。
ラン最初で、集団で走っていた4人の内、Ambergerが遅れ始め、その後すぐにPottsも、AlexanderとO’Donnellのペースについて行くことができなくなった。トレーニングパートナーでもあるこの二人は、お互い押し合う様にペースを上げ、先頭を行くKienleとの差を2分30秒まで縮めたが、その後すぐに後ろから、Dochertyが追いついてき、一時Alexanderが10秒程遅れるという場面もあった。だが、ペース配分を大事にしているAlexanderが、すぐにDochertyに追いつき、今度は、O’Donnellを置き去りにして、2人で並走し始めた。
このまま二人の争いを繰り広げられていたの対し、素晴らしいフットワークで下りを駆け走るKienleに追いつく努力をしていたが、まだ15キロ地点で1分30秒も差が開いていた。最後の1周で、ここからAlexanderがギアを変えスピードを上げ始める。そのペースについていけないDochertyを置き去りにし、残りの5キロで差を詰めようとするAlexanderが、猛チャージをしかけるが、トップを行くKienleも追いつかれるだろうという不安を持ちながらも、コンスタントなスピードを維持し続けていた。
だが、Kienleの強さは、バイクだけではなく、強力なバイクの後に、しっかり走れるという実力を見せつけ、そのままランで逃げ切り、新しいコースレコード3時間54分35秒で、2012 Ironman 70.3 世界王者に、ドイツ代表Sebastian “Sebi” Kienleが、初の世界選手権タイトルを勝ち取った。
その1分後に、最速ランラップ1時間14分58秒で追いかけた、前年度王者オーストラリア代表Craig Alexanderが、2位でフィニッシュし、ニュージーランド代表ロンドンオリンピック選手としての実力を見せたBevan Dochertyが3位入賞した。4位には、ランで更なる強さを見せつけたアメリカ代表Timothy O’Donnell、5位にトップスイマーで今年調子の良さを見せ続けてきたアメリカ代表Andy Pottsがフィニッシュした。
What’s Next?
去年までは、ランが強い選手が、生き残る様なレース展開が多かったこの70.3世界選手権だったが、今年は、優勝候補として、あまり注目をされていなかった、本当のダークホースであるドイツ代表Sebastian Kienleが、強力なバイクの速さを見せ、ランで逃げる展開を繰り広げたことから、今年は、初のアイアンマン・ハワイ出場ということで、これまで以上に注目される選手として取り上げられるに違いない。3度アイアンマン世界王者のオーストラリア代表Craig Alexanderに関しては、順調にここまで調整できているのが、このラスベガス大会でも証明し、距離が2倍になるアイアンマン・ハワイの地で、40歳という歳ながらも、毎年3種目共にバランス良く速くなってきているので、2位フィニッシュしたとしても彼のハワイでのパフォーマンスは、これから最高潮のコンディションで合わせてくるだろう。そして、見た目から分かる通り、いままでスイマー体型からランナー体型へと変貌し、かなり絞ってきたアメリカ代表Andy Pottsも、苦手のバイクを克服するようなパフォーマンスを見せ、ランで粘り5位でフィニッシュしたことから、トップ争いできる3種目の強さにハワイでも注目したい。
リザルト
1.Sebastian Kienle(コースレコード)
00:26:32 | 02:07:54 | 01:16:45 | 03:54:35 |
2.Craig Alexander
00:23:54 | 02:13:23 | 01:14:58 | 03:55:36 |
3.Bevan Docherty
00:23:51 | 02:13:41 | 01:15:35 | 03:56:25 |
4.Timothy Odonnell
00:23:28 | 02:14:02 | 01:15:51 | 03:56:35 |
5.Andy Potts
00:23:20 | 02:13:54 | 01:16:16 | 03:56:54 |
6.Bart Aernouts
00:26:30 | 02:13:02 | 01:18:10 | 04:01:17 |
7.Josh Amberger
00:23:16 | 02:13:47 | 01:21:52 | 04:02:30 |
8.Michael Raelert
00:23:30 | 02:19:30 | 01:17:05 | 04:03:11 |
9.Faris Al-Sultan
00:24:09 | 02:13:05 | 01:22:16 | 04:03:27 |
10.Richie Cunningham
00:25:11 | 02:15:16 | 01:20:09 | 04:03:59 |
プロ女子
今年も強豪揃いのプロ女子フィールドも、始終入れ替わりの接戦が続いた。プロ男子が、スタートした5分後に、プロ女子がスイムをスタートし、まず注目であるスーパースイマーのイギリス代表2010年70.3世界王者Jodie Swallowが、勢いよく飛び出して来た。予想通りの展開で、そのSwallowに引き離されないように、50メートル後方から、優勝候補のLeanda Cave、Kelly Williamson、Meredith Kesslerが、追いかける展開になった。
そのまま徐々にSwallowが、スイムで差を開き、25分26秒のスイムラップトップで、最初にトランジションへと上がって来た。その40秒後に、Kelly Williamson、Leanda Cave、Meredith Kessler等の強豪選手達がスイムを上がり、バイクスタートを続々と開始した。3分程遅れて、優勝候補に上がっている、Melissa Hauschildt、Heather Jackson、Angela Naethが上がって来て、バイクでどれだけ先頭の集団に追いつくことができるかが残りの勝負のキーになってきた。
ここで、スイムで差を開いたSwallowが、2010年のClearwaterの様なフラットコースで、始終トップ独占して優勝するというスタイルは通じないだろうと思われる、この勾配がきついバイクコースで、どれだけトップ集団で生き残れるかが問題だった。バイク25マイル(40キロ)程来た所で、2012年Ironman Hawaii2位のLeanda Caveが、スローケイデンスな力強いペダリングで、すぐさまトップへ上がり、ゆっくりと後方との差を開き始めた。
バイクの速さで注目されていたアメリカ代表Angela Naethは、パンクしたままクラッシュしてしまい、前輪破損しメカニック待ちで時間をロスしてしまったが、傷を負ったままレースを続け、同じくアメリカ代表Linday Corbinもバイクスタート直後フラットタイヤで、スペアタイアを所持してなく、直ぐさまリタイアを決意した。ここですでに、バイクの追い上げに賭けていた選手達のリタイアが続き、残すはアメリカ代表Heather Jacksonがどこまで、このバイクパートで追い上げ、急成長したランスピードを見せてくれるかが注目になってきた。だが、Caveのバイクの力強さもあり、同じ25マイル通過時点で、スイム上がり23位から3位まで追い上げることができた。
そのままCaveのペースは変わらず、トランジションにトップで帰ってき、2位には、ベストバイクラップ2時間27分45秒というタイムで、Jacksonが通過した。その後、ランで勝負を賭けたい、現70.3世界王者のMelissa Hauschildtが3位で上がってきた。
スイムとバイクで2位以降の選手達に付けた2分以上の差は変わらず、そのままCaveがランで逃げ切る展開になってきた。ランで追いつきたいHauschildtだったが、シーズン中の怪我が大きく響いたか、思ったようなランのスピードが出ず、順位を下げることになっていた。ランを強化してきた、Jacksonが、追いかけるが、3周回中の2周目に入ってもトップを行くCaveとの差は縮まない。
だが、このプロ女子のフィールドで、最速のラン脚を持つ、Kelly Williamsonが、7位でバイクフィニッシュし、ランの初盤からプロ男子並みの力強いランで、先頭を行く選手達を、1人ずつ抜いて行った。ラストの3周目に入った所で、2位に上がり、残りは、トップを行くCaveを追い抜くのみになり、彼女と8分以上あった差を2分まで詰めて行った。
最終的に、ステディなペースとバランスのあるパフォーマンスを見せ、イギリス代表Leanda Caveが、2012 Ironman 70.3世界王者に輝き、トータルタイム4時間28分5秒で、初の世界王者のタイトルを掴み取った。2位には、アメリカ代表のKelly Williamsonが1分まで差をつめ、フィニッシュを飾り、その後すぐに同じくアメリカ代表Heather Jacksonが3位で終えた。
What’s Next?
やはりアイアンマン・ハワイでの優勝を目標にしているイギリス代表Leanda Caveが、あまりアクティブでなかった今シーズンの中で、着々とハワイでのパフォーマンスのために、力を付けてきているのを、今回70.3世界選手権で優勝することにより、ハワイ優勝候補の一人だと証明してくれた。2位でフィニッシュしたスーパーランナーのアメリカ代表Kelly Williamsonは、WTC主催の5150、Ironman70.3、Ironmanの3つの世界選手権出場を決め、残るアイアンマン・ハワイで、その実力をどうランナーアップで見せられるかが見所になる。そして、プロデビュー間もないアメリカ代表Heather Jacksonも、年々弱点を改善し、3種目共に強くなり続けているので、ハワイ世界選手権には出場しないが、更なる来年パフォーマンスに期待だ。
リザルト
1.Leanda Cave
00:26:07 | 02:28:17 | 01:29:53 | 04:28:05 |
2.Kelly Williamson
00:26:05 | 02:36:26 | 01:23:19 | 04:29:24 |
3.Heather Jackson
00:28:54 | 02:27:45 | 01:32:13 | 04:32:32 |
4.Melissa Hauschildt
00:28:44 | 02:29:32 | 01:33:05 | 04:35:13 |
5.Joanna Lawn
00:28:39 | 02:33:44 | 01:29:22 | 04:36:08 |
6.Heather Wurtele
00:28:17 | 02:34:49 | 01:29:47 | 04:36:56 |
7.Magali Tisseyre
00:28:34 | 02:34:45 | 01:29:28 | 04:37:03 |
8.Julia Gajer
00:28:35 | 02:34:30 | 01:30:15 | 04:37:15 |
9.Margaret Shapiro
00:28:00 | 02:33:04 | 01:33:04 | 04:37:40 |
10.Jeanne Collonge
00:28:57 | 02:35:09 | 01:31:40 | 04:39:59 |
ハイライト動画パート1
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