今年から、アジア・パシフィック選手権大会として、オーストラリアの主要都市メルボルンにて初開催される。観光地としても有名であり、奇麗な都市だというイメージ多く、レースもほぼフラットコースで、WTCとUSMが経営統合したことにより、共同で運営ができるという利点から、規制やスケジュール等がしっかりした選手権レベルの大会になる。
この異様な速さでのエントリーの締め切りやメディア上でのメルボルンについての記事等が、世界選手権並に盛り上がりを見せているのも現状であり、今回この大会に出場する2011年アイアンマンハワイ世界選手権でトップ10入りを果たした選手達が多数出場することも決まっている。
2週間前のIronman New Zealandが、悪天候の関係で、70.3レースに変更されたことを期に、ここで出場したトッププロ達が、流れ込むように、メルボルン大会の出場を決定していることで、大変トップ層が厚くなっている現状にもある。
すでに2ヶ月前に、書いたプレビュー・パート1の記事を参考にしているが、今回は2011年ハワイ世界選手権で2位に入賞したオーストラリア代表Pete Jacobsが残念ながら怪我で欠場を決意したが、この他にも大変強い優勝候補の選手が多数出場するのか紹介していきたい。
プロ男子
言わずと名の知れた、2008、2009、2011年のハワイ世界大会優勝者であり、2011のハワイでは、15年間破られてなかったコースレコードを更新(8時間3分56秒)したトッププロ選手である、オーストラリア代表のCraig Alexander(クレッグ・アレキサンダー)が最も優勝を秘めている。2000年代初期から2006年までは、アメリカ各地で開催されるLife Time Fitnessシリーズで活躍し、シリーズ優勝を達成する等ショートのドラフティングなしのレースでは、3種目共バランス良く強さを持っており、特にランを得意としている。アイアンマンレースでとても印象に残るのは、彼のランのスピードとレースでのごぼう抜きする追い上げだろう。2011年ハワイ世界選手権では、新しいバイクであるSpecialized Shivと共にでの強さを発揮し、大幅な差をつけ優勝したことから、このコンディションを今も維持していることなら、優勝も確実だろう。
アイアンマンジャパンでは、2008年と2009年優勝しており、2010年はアイアンマンチャイナで優勝している、アジア圏や日本では知名度の高いオーストラリア代表のLuke McKenzie(ルーク・マッケンジー)選手も出場。スイムとバイクのコンビネーションは、最強であるが、ランが一番の弱点である。だが、スイムとバイクの2種目の強みを生かし、2011年のハワイでは、初トップ 10入りを果たした。去年の12月から、今年のステップアップとして、プロトライアスリートチームのTeam Siriusに所属し始め、女子プロでランの強いMirinda Carfraeや2011年ハワイ3位のLeanda Cave等、主に女子トッププロを指導しているコーチであるSiri Lindleyと共に、ラン強化のためにも、新しいトレーニング方法を模索している所である。この選択が良い方向に行っていれば、ランが強くなった彼の新しい姿をメルボルンで見れることに注目したい。
2010年のAbu Dhabi Triathlon初代優勝者で、2008年ランナーアップでハワイ世界選手権2位でフィニッシュした経験がある、スペイン代表のEneko Llanos(エノコ・ヤノス)選手も注目だ。2011年のIronman TexasやIronman Arizonaで2度も優勝をする中、上向きな好調さを見せていたが、10月のハワイ世界選手権では、体調不良でリタイアに追い込まれてしまった。毎年、Ironman TexasやAbu Dhabi Triathlon等 の、気温や湿度が高い場所で実力を出せる、熱さにかなり強い選手であることもわかる。バイクパートが特に強みであり、彼のアグレッシブなポジションでバイ クを乗りこなす姿は、かなり必見だ。そして、その後のランも我慢強い軽快な走りを見せてくれるので、もしかしたら、Craig Alexanderと張り合うことのできる優勝候補の一人でもあるかもしれない。
地元開催ということで、かなり気合いの入っている、オーストラリア・メルボルン出身のLuke Bell(ルーク・ベル)も要注意人物だ。ホームグランドでのレースということで、すべてのレースコースを把握している1人であり、その知識を戦略として、今回のレースへの優勝を目指すだろう。毎年、惜しい所で優勝を逃す場面が続いていたが、今回はこの強豪フィールドである程度の順位を上げてきてもらいたい選手の1人だ。熱さに弱く、ランで落ちてしまうので、Abu Dhabi Triathlonでの失敗をどう調整できてきているかが、彼の優勝へのキーポイントになってくるだろう。
長年ベテランとしてトライアスリート人生を送り、ただ今2001年からIronman New Zealandを10連覇中のニュージーランド代表Cameron Brown(キャ メロン・ブラウン)が11連勝に向けて出場する。アイアンマンハワイでも、数多くのトップ10入り等を果たしており、多数のレースで優勝を飾っている選手だ。2週間前のIronman New Zealandが70.3レースになったことで、惜しくも優勝を逃してしまい、11連勝という記録を生み出すことができなかった。だが、これを期に、今回メルボルン大会にて、この悔しさを見せつけるために、自身が長年持つ経験と、3種目ともバランスの取れた保守的な考えで、常に自分のペースをキープし、頭の良いスマートなレースを展開してくれるだろう。
去年2011年のAbu Dhabi Triathlon優勝者であり、Ironman Franceの覇者でもある、ベルギー代表Frederik Van Lierde(フレドリック・バン・リエルデ)も出場をすることを決定した。去年、Craig Alexanderがアイアンマンハワイ記録を更新するまでは、15年間記録保持者だった伝説のLuc Van Lierdeを兄に持ち、同じDNAが流れていることで、毎年どのレースでも優勝候補として外すことはできない選手だ。今年のAbu Dhabi Triathlonでの連覇は逃したものの、3種目とも総合的に、強い選手であり、特に強みに持つバイクパートでは、そのポテンシャルを存分に証明してくれるだろう。
過去の記事で、WTCのルール変更により、5150シリーズ(前Lifetime Fitnessシリーズ)の最終戦であるHy-Vee Triathlonで優勝すると、アイアンマンと70.3の世界選手権に、最低一回予選大会に出場すれば、世界選手権出場権利を得れることに変更になった 際、すぐにアイアンマンメルボルンへ出場を決意したオーストラリア代表Greg Bennett(グレッグ・ベネット)も大変注目の的だ。去年2011年のコナの大会に観戦に来ていて、そこでいい刺激をもらったのもあり、今年のコナ出場を目指してアイアンマン完走し権利を得ることを第一に走 るだろう。アイアンマンレースでの彼の実力を始めて見れるレースになるので、どういう展開になるかは未知の世界だが、ベテランとしての経験から、総合的に 3種目強い選手なので、自分自身のレース展開に持って行き、初優勝を勝ち取ってくれるのが一番理想だろう。とにかく、今回のレースではコナへの一番乗りのチケットを受け取るために最善を尽くす。
今回メルボルン大会では、ダークホースとして優勝候補の新人として、今シーズン大変期待される選手であるオーストラリア代表Clayton Fettel(クレイトン・フェテル)も外せない選手だ。2010年に本格的にプロ転向以降、怪我等に悩 まされてきたが、2011年のシーズン終盤に、その強さを見せてきた。水泳選手としての経歴やITUでのショートのレースでの経験があり、24歳という若 さでロングディスタンスに転向後は、得意のスイムとバイクの強さのコンビネーションで、ランで粘るというスタイルを取っている。この強豪の中で、この若造がどれだけのポテンシャルの強さを見せれるかが注目であり、スイムでの強さは、どの選手よりも一番で、スイムトップで上がってくることは必須だ。後方の選手達にどれだけのプレシャーをかけ、その自身の描く展開を、ランパートまで持って行くことができれば最高だろう。
70.3レースでの活躍目立つ選手の一人で、アイアンマン・ウィスコンシンにて、コースレコードと優勝を勝ち取ったオーストラリアのタスマニア島出身で、タスマニアデビルというあだ名を持つ、Joe Gamblesも注目の的だ。Trek-KSwissトライアスロンチームの一員として、ここ数年で名を輝かしてきている選手の1人であり、ランを得意としている。2011年のハワイ世界選手権に初出場を果たしたが、トップ10入りをすることはできずにいたが、ショートや70.3でのスピード力を生かし、この強豪フィールドに刺激を与えてくれるに違いない。
この他にも、宮古島トライアスロンの優勝経験があるMitch Anderson(ミッチ・アンダーソン)、ショートや70.3レースでトップに入る実力を持つPaul Mathews(ポール・マシューズ)、ハワイ出場経験がりアイアンマンレースにてトップ3に入る実力のあるMatty White(マティ・ホワイト)等の多くのオーストラリア代表選手が出場する。それに加えて、ダークホースとして、フランス代表Sylvain Sudrie(シルバン・スードリー)やRomain GUILLAUME(ロメーン・ギローム)もトップ争いに入る程強い選手なので要注意だ。
プロ女子
Chrissie Wellingtonが、今年のアイアンマン出場をやめ休息を取ったということで、多くのプロ女子がこの機会に今年のハワイ優勝を狙って、シーズン早々ポイント争いのために、激的な競争が始まっている。
まず、このフィールドで一番の優勝候補として上げられているのは、2010年アイアンマンハワイ世界選手権覇者のMirinda Carfrae(ミリンダ・カーフレイ)だろう。2007年アイアンマン70.3世界王者になってからは、70.3レースを総嘗めにし、その活躍で、70.3世界王者シード枠にて、2009年初めてアイアンマンに参戦し始めた。2009年の初世界選手権にて2位に入賞する等、その存在を大きく知らしめてきた、Chrissie Wellingtonと張り合える能力を持つ選手の1人だろう。元々オーストラリアでのU23等ジュニアオリンピックディスタンス大会に出始め、急速にその存在をアイアンマンのフィールドで見せつけてきた1人の選手であり。身長は低いもののバスケットボール部出身ということで、ランでの、ものすごいバネのある走りを毎回見せてくれる。今回もいつも通りの展開でランでごぼう抜きをするという戦略を取るとともに、最近長年お世話になっていたTeam Siriusを脱退して、セルフトレーニングを始めたことから、この転向がどう今年のパフォーマンスに繋がっていくかが注目の所だ。
Abu Dhabi Triathlonに出場する予定だったが、急遽欠場し、この大会のために体力を温存してきた選手の1人である、2011年アイアンマンハワイ世界選手権にて3位、その後すぐアイアンマンアリゾナにてアイアンマン初優勝飾り、今シーズン右肩上がりのイギリス代表Leanda Cave(リアンダ・ケーブ)も要注意だ。アイアンマン70.3パナマでは、思うようなパフォーマンスができず、3位に終わってしまったが、トップ3圏内へ入る実力があることから、今回どのようなパフォーマンスをこのアイアンマンレースで見せてくれるかが注目だ。スイムをトップで上がってくることを得意とし、ステディなペースで、バイクとランで徐々に引き離し走り抜ける タイプだ。今回、後ろを走るランナーにどれだけ差を付けることができるかが、優勝の鍵だ。
2011年シーズンは、途中足の怪我にも悩まさせられながらも、数々のアイアンマンや70.3レースにて優勝を飾ってきたが、ハワイの世界選手権で5位で入賞したスイス代表Caroline Steffen(キャロライン・ステフェン)”Swiss Miss”も強豪の一人だ。やはり、バイクを強みで持っており、他の選手を圧倒するパフォーマンスを見せてくれるだろう。そして、Chrissie Wellingtonが休息に入ったことで、今年のハワイで優勝するために、現在最高のコンディションだと豪語しているので、今回のメルボルン大会では、期待の優勝候補である。フィアンセのDavid Dellowも一緒に参戦ということで、お互いパワーを与えつつTeam TBB代表選手として両者とも頑張ってくれるだろう。
2011年のアイアンマンハワイ世界選手権では、4位に入賞した、イギリス代表Rachael Joyceも今年更なる注目の選手である。2011年のシーズンは、ITU ロングコース世界選手権で優勝する等、著しい成長を毎年見せてくれている選手だ。小柄な体系だが、スイムを一番得意とし、バイクとランは、ペースをキープ して頭の良いレース展開に持って行くのが得意な選手だ。Abu Dhabi Triathlon Teamの一員として去年までは活動していたが、今年は一人のトライアスリートとして成長していくために、CerveloやNewtonからのスポンサーのバックアップも付き、かなり気合いの入っている選手の一人だ。
元Team TBBのメンバーであり、70.3等のレースで優勝を重ねてきた、今年からTrek-KSwissチームに加入したオーストラリア代表Rebekha Keat(レベッカ・キート)も、9時間を切りのアイアンマンでのパフォーマンスをする1人でもある。ドイツのChallenge Rothにて見せつけ、相当な実力を証明してきた選手の1人だ。2005と2006年は、スポンサーだったハマージェルを取ったことで、そこからドーピング禁止物が体内から出てきてしまい、2年間の出場停止を受ける等、不運な過去を持ってきている選手だ。だが、その2年間を経て、2007年から年々力を付け始め、主にChallege Familyシリーズにて優勝を数々重ね上げ、今年のハワイ出場に向けて万全の状態で優勝を狙ってくるだろう。
その他、アメリカ代表で2010と2011年のアイアンマンフロリダで2連覇をした米軍出身のJessica Jacobs(ジェシカ・ジェイコブス)、今回のフィールドで最速女子スイマーでありスイムトップは確実だろうと思われるアメリア代表Amanda Stevens(アマンダ・スティーブンス)、ショート上がりの選手でアメリカのノンドラフティングレースにて活躍を見せているカナダ代表Sara Gross(サラ・グロス)、そしてニュージーランド代表で今年始めChallage Wanakaで優勝したGina Crawford(ジナ・クロウフォード)も要注意である。
予想
プロ男子の中では、絶対的にCraig Alexanderへの優勝への期待が大きい中、スイムとバイクで強さを見せられるダークホースとしての存在であるClayton FettelとLuke McKenzieの二人の若さがどこまでの実力を出せるかが注目でもある。だが、この二人だけではなく、アイアンマンにてトップ5に入る実力のあるFredrik Van LierdeやEneko Llanos等の総合的に強い選手もいるので要注意だろう。最終的に、ラン勝負になるだろうと思われるが、現在メルボルンでの天候が悪く、風がふき寒い状況にいるということで、この状態が続けばバイクが強い選手が有利に持って行く展開も考えられるだろう。Craig Alexanderが優勝するだろうと言いたい所だが、今回は、あえてGreg Bennettの未知なる実力にかけて優勝の期待もしたい。
プロ女子も男子と同様、Mirinda Carfraeに大変期待がかかっているが、この他にもハワイ世界選手権にてトップ5クラスの選手が多数いる中、Caroline SteffenやRachael Joyce、Leanda Caveの三人がどの様な戦略でこのMirinda Carfraeにプレッシャーをかけ追い込んでくるのかが注目でもある。だが、ロングディスタンスにて、大きな成長を遂げてきているRebekha Keatもこの優勝候補の1人として、彼女の過去の総合8時間後半の走りをこのメルボルンで見せその優勝の可能性を見せてくれるだろう。
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