3回目を迎えた世界規模で、中東地区の代表レースでもある、2012 Abu Dhabi Triathlonが、アラブ首長国連邦のAbu Dhabi(アブダビ)にて、3月3日に開催された。
世界の強豪プロ選手達がラインナップする中、展開予想が難しい接戦が繰り広げられ、今年も白熱したレースが行われたようだ。
レース当日のコンディションは、例年に比べ、気温も低く、スイムは、ウェットスーツを着る選手がほとんどいる中、バイクコースは風が強く、砂が巻き上がるほど、かなり過酷な状態になっていたようだ。
プロ男子
今回、レース前から大変注目視されていた選手は、200キロのバイクパートを有利にもっていくであろう、初参加であるトライアスロン界最速バイクスピードを強みとするアメリカ代表のChris LIetoとスイムとバイクのコンビネーションを強さを持つオーストラリア代表Clayton Fettelが、このフィールドでの優勝候補として取り上げられていた。
男子のスイムスタートが最初に始まり、スイム2周回する中、Clayton Fettelが序盤から、後方の選手との差を広げ始める。だが、1周目の終盤、トップのClayton Fettelを先導するスタッフがスイムルートを間違え、元のルートに戻らされるトラブルも発生したにも関わらず、スイムフィニッシュ時点では、後続との差を1分程に広げ、何もトラブルがなかったように高速スイムを終えた。もし、あのトラブルがなければ、更なる差が付いていただろう。
次に、ソロで3キロを35分で泳ぎきったClayton Fettelを追うように、15人程の強豪選手達がパックをなして、スイムからトランジションへ向かい、その中には、優勝候補のDirk Bockel、Frederik Van Lierde、Faris Al-Sultan、Paul Ambrose、Eneko Llanos、Rasmus Henning等の選手達が続々とスイムフィニッシュした。数分大幅に遅れて、James Cunnama、Leon GriffinとChris Lieto達がトランジションへ向かい、バイクでの追い上げを見せ始める。
驚くことに、最初にバイクでアタックを仕掛けたのは、オーストラリア代表のPaul Ambroseであり、先頭を行くClayton Fettelを掴みにかかる。60キロ地点で、二人が一緒になりトップを行く中、F1サーキットであるYas Marinaに差し掛かる。だが、後方の選手達に差を広げることは出来ずに、そのすぐ背後から、Eneko LlanosとFaris Al-saltanが続き、先頭の二人を追い付く形になる。
3分後にChris Lieto、James Cunnamaを含むグループが追い上げを見せるが、先頭との差を縮められずにいた。その後、サドルのレールが2つにバッキリ折れてしまったため、James Cunnamaは途中リタイアする結果になってしまった。
バイクの後半戦は、アメリカ代表のAndrew Starykowiczが、去年の独走バイクを見せた強みを、今年も見せつけるように、Faris Al-Saltanを抜き、先頭を行っていたClayton Fettelもバイクパートの最初に力を使い過ぎたため抜かされてしまい、ついにはPaul Ambroseをごぼう抜きする強さを見せ始めた。これで、 Andrew Starykowiczがいつも通りのバイクで引き離しにかかり4時間28分というバイクタイムをだしたが、フィニッシュ直前で、大クラッシュをしてしまい、その時肩の骨を折る大けがを追ったようだが、バイクにすぐに戻り、最後まで走り続け、トランジションにトップでバイクをフィニッシュした。だが、クラッシュの代償は大きく、ランをスタートできずにドクターストップで、リタイアに終わった。
その後、ランスタートを最初に始めたのは、バイクで粘り強さを見せた、Paul Ambroseに続き、60秒後にFaris Al-Saltanがランスタート。その5分後には、バイクで落ちてしまったClayton Fettelを吸収した、Rasmus Henning、Andi Boecherer、Fraser Cartmell、Dirk Bockel、Luke Bell、Chris Lieto、Fredrik Van Lierdeの大きなパックがトランジションへ差し掛かった。
Abu Dhabi Triathlon Teamの一員として、このレースで優勝を飾りたいという気持ちが一番大きかったFaris Al-Saltanが、トップを行くPaul Ambroseを抜き去り、ラントップに踊り出た。それを追う様に、IM70.3 Panamaにて、良いパフォーマンスを見せることができなかった、デンマーク代表でスピードスターのRasmus Henningが、10キロ地点では、トップを行くFaris Al-Saltanとは、2分程の差まで徐々に縮め始める。
Rasmus Henningの数秒背後を走る、Dirk Bockel、Eneko Llanos、Fredrik Van Lierdeが、先頭のHenningに付いてくように、ランで抜かすチャンスを探り始める。だが、最後3キロの所で、Rasmus HenningがFaris Al-Saltanに追い付き、数百メートル競い始める。しかし、すぐに、Rasmus Henningが、ショート出身の強さを見せ、アタックをしかけ、差を広げ始めトップを走り始める。
最終的に、フィニッシュ直前で仕掛けたRasmus Henningが2012年Abu Dhabi Triathlonでの初優勝とコースレコードを飾ることができた。その後に、良いリードを稼いだが2位に終わったドイツ代表Faris Al-Saltanがフィニッシュし、3位に初代優勝者スペイン代表Eneko Llanosが入賞した。そして、ドイツ代表Andi Bochererとベルギー代表Fredrik Van Lierdeがトップ5入りを果たした。
去年は、痙攣等に悩まされ思ったシーズンを送れずにいた、Rasmus Henningが見事ランの強さを見せ、今回のAbu Dhabi Triathlonでロングでの優勝を見せた。過去の優勝者もシーズン初めでの強さを見せつけ、1位を近いタイムでフィニッシュしていることから、これから更なる接戦が、アイアンマンレースで見れることだろう。
プロ女子
やはり、プロ女子での最注目選手は、2011年アイアンマン70.3世界王者のMellisa Rollisonであり、このロングコースでの実力を見れると注目していた。
スイムスタートから、常に男子と変わらないスイムの強さを見せつける、Jodie Swallowが先頭を引っ張るが、やはり先導の間違いでコースを外れる同じハプニングが起こる中、スイムを38分でフィニッシュ。だが、後ろから追いかけるCalorine Steffen、Rachel Joyce、Emma-Kate Lidburyのパックに、2分差をつけ最初にトランジションへ。その後、Nikki Butterfield、Angela Naeth、Melisa Rollisonが5分程の差でトランジションへ向かい、バイクスタートし追い上げに差し掛かる。
いつも通りの展開で、Jodie Swallowがスイムからバイクへとトップを独走し、背後の選手にプレッシャーを駆け始める。だが、これから200キロという距離を、このリードをキープできるかが彼女にとって大きな疑問となってくる中、最初にF1サーキットのYas Marinaへ一歩踏み始めるが、ここの時点で後方との差が徐々に縮まっていることがわかった。
バイクの2周目に差し掛かり、Yas Marinaに入った時点で、Angela NaethとNikki Butterfieldがアタックし始め、トップへ踊りだすが、それを追う様にCaroline Steffen、Rachael Joyce、Mellisa Rollisonが追いかける。ランを最大の強みとするMellisa Rollisonにある程度の差を広げたい思惑から、先頭の4人が引き離し始める。だが、最初にトランジションに来たのは、元サイクリストでママアスリートのNikki Butterfiledが4時間55分というタイムでバイクフィニッシュ。その後すぐに、同じくバイクが強みとしているAngela Naethがランで追いかけ始める。
20キロのランに差し掛かり、先頭を走るNikki Butterfieldを追いかけるように、後続の選手が差を詰めようとするが、調子の良いランを見せるButterfieldに差を縮めることができずにいた。そして、レース始めにトップを走り続けていたJodie Swallowもペースを落とす中、Caroline Steffen、Mellisa Rollison、Angela Naethが接戦を繰り広げ始める。
最初にフィニッシュラインを飾ったのは、バイクの強みとランでの粘りを見せたNikki Butterfieldが、子供を抱きかかえながら、2012年Abu Dhabi Triathlonでの初優勝とコースレコードを達成することができた。その後に、Ironman 70.3 Panamaで優勝したAngela Naethが2位でフィニッシュし、シーズン最初のレースとして調子の良さを見せたCaroline Steffenが3位に入賞した。4位には、ランで追い上げにかかるつもりだったが、3週間程ラン練習ができてなかったわりに、1時間14分というランタイムをはじきだした、Mellisa Rollisonが入り、5位にイギリス代表のRachael Joyceがトップ5を占めた。
今回、劇的なバイクでの追い上げを見せたNikki Butterfieldだったが、ランでの強みを見せつけ後続を寄せ付けない2分30秒の差をつけ優勝を飾った。今年とても調子が良いAngela Naethやロングディスタンス初挑戦のMellisa Rollisonといい、これから期待の新人選手達の今年のパフォーマンスが大変楽しみである。
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